前線のこう着が続く一方で、ロシアは弾道ミサイルを使ったウクライナへの攻撃を強めている。防空網を圧倒しウクライナ国民の士気を低下させることで、戦略的主導権を取り戻そうとしている。

繰り返されるこうした攻撃は、当初の戦争目標をロシアのプーチン大統領がなお完遂する意思を持ち続けていることを示唆する。ウクライナはモスクワやその周辺地域を過去最大規模のドローン(無人機)で攻撃し、ロシアの石油精製施設を標的とした攻撃作戦がますます精度を上げている。こうした状況にロシア国内ではプーチン体制に対する支持が後退し、将来への悲観が強まっている。

ベルリンを拠点とする米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブーエフ所長は、「成果を重ねているウクライナの攻撃に対して、ロシアは何らかの形で応じる必要があると感じている」との見解を示し、「ウクライナのパトリオット迎撃ミサイルの在庫が大きく減少しているため、ロシアは今がチャンスだとみている」と指摘した。

防空ミサイルは中東での戦争で需要が高まったこともあり、ウクライナは思うように補充できていない。トランプ政権の関心はイラン戦争に向かい、米主導によるウクライナとロシアの和平交渉は停滞している。

ロシアのラブロフ外相は25日、ルビオ米国務長官との電話会談で、ロシアがウクライナの首都キーウへの激しい攻撃を継続する方針を伝え、米国民と外交官を同市から退避させるよう助言した。

この前日にロシアは、戦争開始以降で有数の激しい攻撃を実施。中距離弾道ミサイル「オレシュニク」を1月以降で初めて使用したほか、短距離弾道ミサイル「イスカンデルM」を30発発射し、キーウでは広範囲にわたって被害や負傷者が発生した。

ウクライナ空軍によると、キーウに加え主要数都市も標的となり、攻撃に投入されたミサイルは合計で90発、ドローンは600基に上ったという。

ウクライナはミサイル11発を迎撃し、これを含め無力化したミサイルの割合は37%に上るとしているが、ウクライナ空軍司令部の日次データを基にブルームバーグが試算したところ、キーウに大規模攻撃が前回あった際の今月14日に記録した67%を大きく下回った。

ウクライナ国防相の顧問を務めるセルヒー・ベスクレストノフ氏は、24日の攻撃後にフェイスブックで、「残念ながら、わが軍の防空資源で対処するにはミサイルの数が多過ぎた」と述べた。

キーウには米国製のパトリオット迎撃ミサイルシステムが配備されているが、その防御がない地方都市の状況はさらに厳しい様子だ。ウクライナ防空当局によると、南部のオデーサ、中部のドニプロ、北部のチェルニヒウなどが標的とされた今月18日の攻撃では、発射された計14発のイスカンデルMミサイルを、同国は全く迎撃できなかった。

このミサイル攻撃は、ロシアが冬季に使った作戦を思い起こさせる。ロシアは昨冬、エネルギーインフラを執ように攻撃してウクライナ国民を凍えさせ、屈服させようとした。この攻撃で数十万人が水道や電力を失い、戦争開始以降最も厳しい冬に耐えることを余儀なくされたが、戦争終結に向けた譲歩をウクライナから引き出すことはできなかった。

ただ、ロシアに弾道ミサイルによる大規模攻撃を長期間継続できる能力があるかどうかは不明だ。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は26日、キーウからの退避勧告に対する米国からの応答はまだないと記者団に語った。

ロシアは民間人を標的にしていることを否定しているものの、2022年の全面侵攻開始以降、ウクライナの都市を繰り返し攻撃し、住宅や民間インフラに甚大な被害を与えてきた。

弾道ミサイルはドローンよりはるかに高速で、かつ急角度の軌道を描いて飛行するため、対応可能な時間は短く、迎撃が特に難しい。飛行速度の遅い巡航ミサイルは比較的迎撃しやすいものの、大きな破壊力を持つイスカンデルMを確実に命中させるため、防空側の注意をそらせる目的で使われることが多い。

ウクライナが西側製の対弾道ミサイル迎撃システムの弾薬不足に悩む一方で、ロシアはミサイルの生産を継続できている。攻撃に使用されたミサイル全体に占めるイスカンデルMの割合は、1月の55%から3月には30%未満に低下したが、その後再び増加し、5月はこれまでで41%を超えている。

原題:Putin Steps Up Kyiv Missile Strikes Seeking New Momentum in War(抜粋)

--取材協力:Alex Kokcharov.

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