関係改善に動くが、EUへの再加盟は難しい

英国は自由貿易に背を向けるためにEUを離脱した訳ではない。保護主義的なEUを離脱し、独自に貿易交渉をすれば、より多くの国や地域と貿易協定を締結できると考えた。

実際、離脱を決めた後の英国は、移行期間終了までに70近くの国や地域と貿易協定を締結した。

これらの多くは離脱前の英国がEUの一員として交わした貿易協定の焼き直しに過ぎなかったが、英国はその後、オーストラリア、ニュージーランド、インド、シンガポールなど、離脱前に協定を結んでいなかった国とも貿易協定を締結した。

日本も加わる環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)にも正式加盟を果たした。

だが、EUもその後、これらの国の多くと貿易協定を締結し、英国がEUよりも有利な条件で貿易活動を行う余地は限られる。

離脱後に冷え込んだ英国とEUの関係は改善に向かっている。北アイルランドの国境検査の軽減、EUの研究助成プログラムへの再参加、英国水域でのEUの漁業アクセス継続、英国製品輸出時の食品安全基準や検疫検査の軽減などで合意した。

では、英国が近い将来にEUに再加盟する可能性はあるのだろうか。残念ながら、近い将来にその可能性は低そうだ。EUの共通通貨の採用見送り、EU予算への拠出減免など、離脱前の英国に認められていた特権をEU側が認める可能性は低く、英国民の多くはそれを受け入れられないからだ。

※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)田中 理