20日の米金融市場では、S&P500種株価指数は4営業日ぶりに反発した。イラン戦争終結に向けた合意期待を背景とした原油価格の下落を受けて、株式相場と債券相場は上昇した。

トランプ米大統領は、ホワイトハウスのプール取材で、米国はイランとの間で「最終段階」にあると述べた。イラン情勢について「どうなるか見てみよう」とも発言した。

ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は、前日比約6%下落し、1バレル=98ドル台前半で取引を終えた。米国債利回りは全年限で低下した(価格は上昇)。外国為替市場では、ドルは主要10通貨(G10)の大半に対して下落。円は対ドルで8営業日ぶりに反発した。

ベテラン市場ストラテジストのルイス・ナベリエ氏は、イラン戦争を巡る「事態の収束を望む声は強いが、これまでの交渉では重要な論点で隔たりが大きく、お互いに相手側の譲歩を待っている状況だ」と述べた。その上で、「たとえ合意が成立しても、それが実際に守られるかを見極めるには時間が必要で、状況が正常化するまでには時間を要する可能性がある」と語った。

戦争に伴うエネルギー価格急騰がインフレ圧力を強めるとの懸念から前日までS&P500は3日続落した。20日には、連邦準備制度理事会(FRB)が前回会合の議事要旨を公表。インフレ率が目標を上回り続けた場合には、利上げを検討する必要が生じる可能性が高いと、過半数の当局者が指摘していたことが明らかになった。

ハイテク株主導で年初来安値圏から急反発してきた株式相場に、なお上昇余地があるのかを見極めようとする動きも強まった。

引け後にエヌビディアが示した5-7月(第2四半期)の売上高見通しは、投資家の期待に届かなかった。人工知能(AI)向け半導体業界で競争が激化しているとの懸念が強まった。時間外取引で、エヌビディアの株価は一時約3%下落した。

インタラクティブ・ブローカーズのスティーブ・ソスニック氏は、「戦争が最終段階にあるとの今回の発言が事実であることを期待しているのはいつも通りだ。ただ、それがすぐに実現するとの見方には、これまでの経緯を踏まえた相応の懐疑感も持っている」と述べた。

メイン・ストリート・リサーチのジェームズ・デマート氏は、「市場はAIへの期待が債券利回り上昇という逆風を跳ね返せることを示す安心材料を求めており、エヌビディアの決算はまさに適切なタイミングで発表される」と述べた。

国債

米国債利回りは全年限で低下(価格は上昇)。トランプ氏がプール取材で米国はイランとの間で「最終段階」にあると発言した。米国とイランが合意に近づいているとの期待から、米国債に買いが入った。

2年債から10年債までの利回りが、一時、いずれもおよそ10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。

これまで、世界のエネルギー輸送で重要なホルムズ海峡が事実上閉鎖されたことで、エネルギー価格が急騰。インフレ圧力が強まり、利回りを押し上げてきた。

トランプ氏の発言を受けて、米国債先物の取引高は急増した。ただ、10年債利回りはなお約1年ぶりの高水準圏にあり、30年債利回りも5.12%前後と、2007年以来の高水準に近い。

イランと米国の間での和平合意を巡っては慎重な見方も出る。バンク・オブ・ナッソー1982のチーフエコノミスト、ウィン・シン氏は、和平の成立を「信じたいのはやまやまだが、正直なところ、こうした話はこれまで何度も聞いてきた」と述べた。

外為

外国為替市場でブルームバーグ・ドル指数は反落。一時、約6週間ぶりの高値を付ける場面もあったが、その後下げに転じた。米国はイランとの間で「最終段階」にあるとしたトランプ氏の発言を受けて、イラン戦争終結に向けた交渉進展への期待が広がり、原油価格が下落したことが材料となった

ドルは主要10通貨(G10)の大半に対して下落した。米国債利回りの上昇が一服したこともドル売りにつながった。

円は対ドルで8営業日ぶりに反発した。一時、円は対ドルで1ドル=159円17銭まで下落する場面もあったが、その後は上昇に転じた。

ポンドは対ドルで0.4%上昇し、1ポンド=1.3447ドルとなった。値動きの荒い取引の中で、それまでの下落を埋めた。欧州時間には一時0.15%安となる場面もあった。英国の4月消費者物価指数(CPI)上昇率が1年以上ぶりの低水準となった。イングランド銀行(英中央銀行)は年内に利上げに動くと見込まれるが、緊急性は低下する可能性が高い。

原油

ニューヨーク原油相場は大幅続落。米国はイランとの間で「最終段階」にあるというトランプ大統領の発言で、ホルムズ海峡を通じたエネルギー輸送が近く再開されるとの楽観が強まった。

ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=100ドルを割り込んで引けた。

ストーンXのグローバルマクロ市場アナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「こうした類いのニュースは割り引いて受け止める必要がある」と指摘。

「トランプ氏はこの紛争期間中、同様の主張を数多く行ってきたが、大半のケースはその逆となった。今回は違うのか見極めたい」と述べた。

ホルムズ海峡を通過する輸送量増加の兆しも、原油価格に上乗せされていたリスクプレミアムを低下させている。足元では、韓国や中国の超大型石油タンカー(VLCC)がホルムズ海峡の通過を試みている。ここ数日、通航量が比較的少なかったが、小幅に増えている。

イラン革命防衛隊(IRGC)は「IRGC海軍による調整と安全確保の下」、過去24時間に石油タンカーやコンテナ船などを含む船舶26隻がホルムズ海峡を通過したと、X(旧ツイッター)に投稿した。ただ、イラン側はこれまで、船舶追跡データが示す通航数を大きく上回る数を示してきた。

イランは同国が示した14項目の提案に対する米国の新たな草案を検討しているが、まだ回答は行っていないと、準国営タスニム通信が報じた。同国交渉チームに近い関係者の話を引用している。

これより前、イランは米国またはイスラエルが攻撃を再開した場合、中東以外の地域でも報復に踏み切ると警告した。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比5.89ドル(5.7%)安い1バレル=98.26ドルで終了。北海ブレント先物7月限は6.26ドル(5.6%)安の105.02ドルで終えた。

金相場は反発。中東での紛争終結に向けた米国とイランの取り組みを巡って楽観が広がり、金利高止まり観測が後退したことが背景にある。

スポット価格は一時、前日比1.6%上昇した。ドル指数と米国債利回りの低下が、ドル建てで取引され利息を生まない金への追い風となった。

スポット相場はニューヨーク時間午後3時57分現在、前日比64.58ドル(1.4%)上昇し、1オンス=4547.19ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は24.10ドル(0.5%)高の4535.30ドルで引けた。

欧州

20日の欧州市場では、ドイツ債と英国債が米・イランの停戦が発表された4月8日以来の大幅高。戦争終結に向けた合意が成立し、エネルギー供給の制約が緩和されるとの楽観が広がった。

英国、フランス、ドイツ、イタリアなど欧州主要国の10年物国債利回りはいずれも10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上低下した。短期金融市場が織り込む年内の利上げ幅は、欧州中央銀行(ECB)が64bpと、前日比で10bp後退。6月の0.25ポイント利上げも完全には見込まれていない。

イングランド銀行(英中央銀行)の年内利上げ見通しは48bpと、前日比で14bp低下した。

株式は3日続伸。米国とイランの交渉を巡る報道で、中東の戦争が近く収拾に向かうとの期待が強まった。

ストックス欧州600指数は1.5%高で取引を終了。3日続伸は今月に入り初めて。北海ブレント原油は一時7%を超える下げで1バレル=103ドル台を付け、インフレ懸念が和らいだ。

個別では、オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングが5.9%上昇。UBSグループのアナリストが、目標株価を引き上げた。

5月20日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)

原題:Stocks, Bonds Climb as Oil Falls on US-Iran Hopes: Markets Wrap(抜粋)

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