2025年の東京23区の価格指数(2005年=100)は、前年比+14%上昇の「272.4」となり、過去最高を更新した。2013年からスタートした「アベノミクス以降の価格上昇局面」が継続している。

「エリア別価格指数」は、都心が「360.4」(前年比+16%)、南西部が「247.4」(同+13%)、東部が「244.0」(同+10%)、北部が「239.9」(同+15%)となり、都心が最も大きい上昇率を記録した。

また、「タワーマンション価格指数」は「393.5」(前年比+19%)と大幅に上昇し、東京23区の上昇率(同14%)を上回った。

新築マンション購入時において、資産性を重視する傾向が一段と強まっている。

今回のレポートでは、新築マンション価格の決定構造がコロナ禍を経て、どのように変化したかについて確認したうえで、新築マンション市場の今後の方向性について考察したい。

新築マンション価格の決定構造の変遷

本章では、「新築マンション価格指数」の算出に際して、各年度のデータを用いて推計した結果を活用し、新築マンション価格の決定構造の変遷(2005年~2025年)および価格評価の変化について確認する。

具体的には、
(1)「最寄り駅までのアクセス時間」、
(2)「住居の広さ」、
(3)「中心部までのアクセス時間」に対する評価が、マンション価格にどのような影響を及ぼしているのかを確認する。

「最寄り駅までのアクセス時間」に対する評価~「駅近」志向がさらに高まる。「バス便」に対する評価は大きく低下。

(1) 「最寄り駅までの徒歩所要時間」

「最寄り駅までの徒歩所要時間」の回帰係数の符号は、一貫してマイナスとなっている。

これは、最寄り駅までの徒歩所要時間が長くなる(短くなる)ほど、新築マンション価格(坪単価)が下落(上昇)することを意味する。

各フェーズ(I~III)における回帰係数の推移をみると、「上昇フェーズI」と「下落フェーズII」では、上下動を繰り返しながら概ね同水準で推移していた。

しかし、「上昇フェーズIII」に入り、マイナス幅が拡大し、コロナ禍以降もその傾向が継続している(2013年▲1.6%2⇒2019年▲1.9%⇒2025年▲2.9%)。

これは、「駅近」に対する価格評価が一段と高まったことを示唆している。

新築マンション購入時に、資産性を重視する動きが強まっている。

アットホームの調査によれば、マンション仲介業者に資産性の高いマンションを見極めるポイントをたずねたところ、「最寄り駅との距離」(73%)との回答が最も多かった。

また、マンションの売却を行った人を対象としたLIFULL4の調査によれば、「当該マンションを購入した際の決め手」を尋ねたところ、「最寄り駅との距離」(44%)との回答が最も多かった。

実際に、首都圏の徒歩3分以内のマンションを、築10年後に売却した場合、新築時の価格を上回るとの分析もある。

将来の売却を見据え、最寄り駅までの距離を重視した住まい選びを行っていると推察される。

また、「駅近」の価格評価が高まった要因として、共働き世帯の増加が挙げられる。

独立行政法人労働政策研究・研修機構によれば、共働き世帯は、2013年の1,069万世帯から2024年には1,300万世帯へと増加し、約1.2倍となった。

リクルートの調査によれば、首都圏におけるマンション購入世帯に占める共働き世帯の割合は62%に達し、2001年の調査以降で最も高い水準となった。

共働き世帯は、
(1)通勤時間の短縮、
(2)生活利便性(仕事帰りの食事や買い物)、
(3)保育園等の送迎などを重視して、「駅近」物件を志向する傾向があるとされる。

(2) 「最寄り駅までのバス所要時間」

「最寄り駅までのバス所要時間」の回帰係数の符号はマイナスであり、係数の平均値(2005年~2025年)が▲4.6%と、「徒歩所要時間」(平均値▲1.9%)と比較して一貫して大きく、「徒歩所要時間」以上に、価格評価へ影響を及ぼしている。

回帰係数の推移をみると、「上昇フェーズⅢ」に入り、マイナス幅が拡大したものの、コロナ禍以降、いったん縮小する動きが見られた(2013年▲2.7%⇒2019年▲7.4%⇒2023年▲3.7%)。

東京では、テレワークとオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」が定着し、会社への出勤回数が減少するなか、バス利用を前提とした物件まで選択肢を広げて検討するケースが一時的に増加した。

しかし、2024年以降、回帰係数のマイナス幅は再び拡大している(2023年▲3.7%⇒2025年▲10.7%)。

前述の通り、新築マンション購入時に、資産性を重視する動きが強まっており、交通利便性の高い物件に対する評価が高まっている。

加えて、バス運転者数の減少や労働時間規制の強化等を背景に、都市部でもバスの減便や路線廃止が増加していることから、バス利用を前提とした物件の評価が低下している可能性がある。