日銀が6月利上げを実施するためのハードルは日銀短観の見通し

為替市場では、ドル円の上昇圧力が強くなっている。ドル円が158円を超えたタイミングで急落(60銭程度)するなど、不安定な動きとなっているが、徐々に水準が切り上がっている。もっとも、先週末(5月8日)からの変化をみると、ドル円は+1.1%となったが、ドル指数も+1.0%である。足元のドル円の上昇はドルの強さによるものと言え、極端に円が売られている訳ではなさそうである。為替介入の効果がまったくないとは言えない。

とはいえ、円独歩安とはならなくても、ドル高によってドル円が上昇すれば、日本の輸入物価の上昇圧力になる。この日、日銀の増審議委員が講演を行い、「私としては、先月慌てて利上げしなければいけないほどの状況ではないと判断しましたが、景気下振れの兆しがはっきりとした数字で表れないのであれば、できる限り早い段階での利上げが望ましいと考えております」(日銀資料)と述べた。6月決定会合における利上げ支持を示唆するような発言であり、タカ派的である。4月決定会合で利上げを主張しなかった増氏がこのような踏み込んだ発言をした背景としては、①市場で楽観論が生じたことと、②円安リスクが高まっていることがあるのだろう。

仮に増氏が6月会合で利上げを主張すれば、4月に利上げを主張していた3名の審議委員と合わせて反対票が4票になる。すでに市場では5月21日に行われる予定の小枝審議委員の講演に注目が集まっている。もっとも、執行部(総裁・副総裁)が現状維持を主張し、審議委員が反対して利上げを実施することのハードルは高いと、筆者はみている。むろん、すでに利上げを主張している3名の審議委員は6月も利上げを主張する可能性が高い。しかし、増氏が「景気下振れの兆し」について言及しているように、非常に高い確率で景気が悪化しないという確信がなければ、他の審議委員は利上げを主張しないだろう。

「景気下振れの兆し」について、4月の景気ウォッチャー調査が弱い結果となったことに、筆者は注目している。株価だけをみるとイラン情勢の悪化などなかったかのような動きとなっているが、企業はそれほど楽観視していないのではないだろうか。景気ウォッチャーだけではなく、日銀短観の先行指標である、ロイター短観やQUICK短観は製造業のDIがしっかりと悪化している。4月のロイター短観によると、製造業のDIが7となり、3月分の18から急落した。4月のQUICK短観によると、製造業のDIが17となり、3月分の23から低下した。日銀短観の6月調査も下振れリスクが大きいと判断されれば、6月は利上げをスキップして7月会合で判断すべきという考えになるだろう。

補正予算の早期編成は既定路線、淡々と予備費を積み増す見込み

この日、共同通信が「政府が2026年度補正予算案を編成する検討に入ったことが14日分かった」と報じた。ロイターや読売新聞も同様に報じており、補正予算が編成される可能性が高そうである。原油高に対応(ガソリンや電気代・ガス代の補助金)にはすでに手当されている基金や、26年度当初予算に計上された予備費では不足するという見方が多く、補正予算の編成は既定路線と言える。「補正予算案の編成過程で、予備費以外の歳出を求められることも予想される」(ロイター)という見方もあるが、高市首相が補正予算の肥大化には否定的であることを考慮すると、予備費の積み増しを中心とした最低限の補正予算になるだろうと、筆者は予想している。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)