(ブルームバーグ):殺傷能力のある武器の輸出制限緩和を政府が21日に決定したことで、日本は世界の新たな防衛装備供給国になり得るとの期待が高まっている。数十年にわたるタブーの解消は、10年前には政治的に考えられなかった。もっとも、これは比較的容易な一歩に過ぎない。
真の課題は、世界的に需要が高まる中で、競争力と存在感を持てるよう防衛産業を十分なペースで成長させられるかにある。この分野は長年の投資不足に苦しんできた上、防衛費を増やすという差し迫った事情もある。国内需要を満たすだけでも容易ではなく、外需に応える余力は限られる。
今回の決定の意義は過小評価できない。1967年に導入され、76年にはほぼ全面禁止へと拡大された海外向け軍事装備品輸出の自主規制は、戦後の厳格な平和主義を象徴していた。
これらはあくまで自主的な制限であり、憲法が明示的に輸出を禁じているわけではなく、時代遅れになりつつあった。しかし、この姿勢を転換するには政治的なリスクを伴う。10年前であれば、大規模な抗議デモが発生していた可能性もある。
これを実現させた高市早苗首相の手腕は評価されるべきだ。外部からはトランプ米政権や同盟関係への影響に対応する動きだとみる向きがあるかもしれないが、これは高市氏のような自民党内のタカ派にとって長年の目標だった。
故安倍晋三元首相が2014年に規制緩和に着手し、今回の動きはその延長線上にある。ロシアによるウクライナ侵攻以降、日本の安全保障政策の正常化はかつてない速度で進んでいる。ここ5年の変化は、それ以前の50年分に匹敵すると言っても過言ではない。
こうした変化は各所に見られる。初の反撃能力を備えた国産ミサイルの熊本配備から、自衛隊が米国やフィリピンと初めて合同演習に本格参加したことまで多岐にわたる。中国の強硬姿勢や、地域の安全保障における米国の関与低下を巡る懸念が高まる中、政治・実務両面で日本に期待を寄せるアジア諸国は増えている。
日本にとって好機
これは日本にとっても好機だ。ドイツと同様、自動車など既存産業の余剰生産能力を防衛分野に転用する余地がある。高市氏の主なアドバイザーは、政府主導の防衛投資の不足が経済の足かせになってきたと指摘する。日本は24年に米国の国防高等研究計画局(DARPA)をモデルとしたデュアルユース(軍民両用)研究機関を設立したが、その規模は依然として小さい。自由主義陣営の新たな武器供給拠点となるには、政府が主導的な役割を果たす必要がある。
もっとも、課題は多い。多くの分野と同様、防衛産業も慢性的な投資不足に直面してきた。長年にわたり主要顧客は政府のみで、防衛費は対国内総生産(GDP)比1%に抑えられていた。上限引き上げ後も投資の大半は米国の技術に向けられた。厳格なサプライチェーン要件から、安保関連事業は高コスト・低収益と見なされた。政府契約が利益率を抑制し、ESG(環境・社会・企業統治)投資資金も軍事関連企業を敬遠してきた。こうした環境下で、多くの企業が業界から撤退した。
状況は変わりつつある。元防衛省当局者で、現在は地経学研究所の主任研究員を務める小木洋人氏は、国際情勢が日本の海外展開に有利に働いていると指摘。業界は需要を巡る前提を見直しつつあるとみている。複数の海外顧客が日本企業に接触すれば、製品需要に関する従来の認識も変わるとの見方だ。
民主主義諸国が脅威の高まりを感じる中で、武器需要は世界的に拡大する一方、イランやウクライナでの戦争で取り崩された備蓄を補充する需要により、既存メーカーの生産能力は抑制されている。重工業と精密技術の双方で強みを持ち、アジアのルールに基づく秩序の守り手と見なされつつある日本のような新たな供給国は、世界がまさに求めている存在だ。小泉進次郎防衛相も先週、複数の国から関心が寄せられていると明らかにした。
三菱重工業が建造する「もがみ」型護衛艦をオーストラリアが購入する契約は、防衛産業における格好の宣伝材料となっている。ニュージーランドからインドネシアまで複数の国が同艦に関心を示しており、台湾に対する護衛艦の設計図共有の制限が緩和された可能性も現地で報じられている。
必要なのは意志
防衛テクノロジーを手がける米アンドゥリル・インダストリーズの創業者パーマー・ラッキー氏は昨年、日本製部品のみを用いた先端ドローン(無人機)を東京で披露した。中国のサプライチェーンに依存せず、これを実現するのは不可能だと多くの人に考えられていたと指摘。日本は製造の全てを自国で完結できる世界で数少ない国だと語りながら、「やろうと思えば」と付け加えた。
ラッキー氏の最後のコメントが鍵だ。技術力に疑いはない。今必要なのは意志だ。政府は主導的な役割を担い、海外販売の共同促進、投資を呼び込む調達契約の見直し、ドローンなど先端分野の研究開発規制の緩和、企業に余剰生産能力の活用を促す取り組みを進める必要がある。自由主義陣営はその動きを待っている。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Japan Can Build the Free World’s Defense Industry: Gearoid Reidy(抜粋)
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