中国の習近平国家主席は長年、外交会合や国際機関への参加を阻むことで台湾指導者の孤立化を図ってきた。この取り組みに、空からの締め出しが新たに加わったようだ。

セーシェルとモーリシャス、マダガスカルは21日、台湾総統の専用機に対し、それぞれの上空飛行許可を取り消し、頼清徳総統は直前でアフリカのエスワティニ訪問を取りやめた。許可取り消しは協調して決定されたもようで、台湾当局は中国の要請に基づくとみている。

中国が友好国に働きかけ、広範な空域で頼氏の飛行を阻止しようとした背景で、イランはホルムズ海峡で世界の石油供給の約5分の1を締め付けており、トランプ米大統領は海上封鎖でこれに対抗している。いずれの動きも貿易を支える航行の自由という原則に挑戦するものだ。

アトランティック・カウンシルのスン・ウェンティ氏は「台湾総統の航空機に関する限り、空域における無害通航という概念は存在しないということだ」と指摘。「中国による空からの封じ込めと呼べるだろう」と述べた。

中国外務省の郭嘉昆報道官は23日の定例記者会見で、同国が「威圧キャンペーンを世界中で展開している」と米国務省が批判したことについて、中国政府としては「正当な行動」だと反論した。

「一つの中国という原則を守るために関係国が取った正当な措置を、無責任に非難するのは善悪を完全に取り違えている」と同報道官は述べた。

今回の件は頼総統の外交にさらなる打撃となった。昨年7月にも米国経由が認められず訪問を断念している。

Photographer: An Rong Xu/Bloomberg

匿名の台湾高官は、今後は直前の中止を避けるため追加の代替計画が必要だと述べた。

今回、アフリカ3カ国は飛行情報区(FIR)への進入を拒否した。航行の自由というルールが適用される公海とは異なり、各FIRを管轄する当局は外国機の進入や通過を認めるかどうかを決定できると、国立台湾大学のチャン・フアンチー教授は述べた。頼氏への拒否は「最終的には国際法に違反するものではない」と同氏は付け加えた。

台湾が外交関係を維持する国は現在12カ国にとどまり、その多くは太平洋や中南米に集中している。これらの地域への航路は主に米国や日本などの同盟国が管轄するFIRを通るが、内陸国のパラグアイは中国との関係を優先する近隣国に囲まれている。

米国防総省の元高官、ドゥルー・トンプソン氏は「これが前例となり、国際的な慣例は破られる」と予想。「今後も同様の手法が使われる可能性は高い」と述べた。

中国は過去にも台湾総統の移動を妨害しており、2002年のインドネシア訪問や2007年のメキシコ上空通過拒否があったが、同盟国への訪問が阻止されたのは初とみられる。

中国の影響が強く及ぶアフリカで、エスワティニは唯一、台湾と外交関係にある。3年前には蔡英文前総統が訪問し、女性支援基金に100万ドル(約1億6000万円)の拠出を約束した。

米国はトランプ政権下で国際社会での同盟関係が弱まっており、中国に有利な環境となっている。頼総統は「台湾独立に向けた現実路線の担い手」を自称しており、中国は警戒を強めている。

台湾は近年、外交面で一定の成果を上げてきた。高市早苗首相は昨年11月、台湾有事が日本の集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると発言し、中国の強い反発を招いた。こうした動きに対抗し、中国は台湾の野党党首を10年ぶりに招待するなどしている。

今回の訪問はアフリカ首脳らとの接触機会にもなるため、中国はこれを強く警戒していた。台湾は中国が「経済的威圧」で3カ国に圧力をかけたと主張したが、証拠は示されておらず、中国は「でっち上げだ」と否定した。

ウィリアム&メアリーのエイドデータがまとめた調査によれば、中国は今回のアフリカ3国に大きな経済的影響力を及ぼしている。

「セーシェル、マダガスカル、モーリシャスが頼総統の空域通過を拒否したことには、さほど驚いていない」と、エイドデータのブラッド・パークス事務局長は述べた。「いずれも台湾と外交関係がなく、中国から多額の援助を受けている」と指摘した。

原題:Xi Weaponizes Foreign Airspace in Latest Bid to Isolate Taiwan(抜粋)

--取材協力:Dan Murtaugh.

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