〈ウォーシュ氏の「独立性」強調をストレートに安心材料と言えない理由〉

米東部時間21日午前10時(日本時間同日午後11時)には、ウォーシュ次期FRB議長候補の公聴会が予定されている。これに先立ち、証言原稿の内容が報じられている。各種報道によると、ウォーシュ氏はFRBの独立性を守る考えを強調するという。

市場では、ウォーシュ氏がFRBへの介入姿勢を強めていたトランプ大統領によって選ばれた人物であることから、独立性が低下する可能性が不安視されている。ウォーシュ氏が独立性を強調するということであれば、スムーズな議長の交代が実現し、ボラティリティが高まることはなさそうであるという意味で市場は好感するだろう。

また、ウォーシュ氏がこだわりを持っているとされるFRBのバランスシートの縮小というテーマについて、証言原稿では踏み込んだ内容にはなっていないようである。この点も、市場では好感されるだろう。

もっとも、中長期的には①ウォーシュ氏は独立性重視なので物価の安定が担保される、②バランスシート縮小は主張せずに市場の安定も担保される、というほど楽観もできない。

そもそも、中央銀行の「独立性」というのは非常に曖昧である。独立した判断であると言いながら「阿吽の呼吸」でトランプ大統領の意向に沿って利下げを主張する可能性は十分にある。

ポリティコが先に報じた証言内容によれば、ウォーシュ氏は「FRBの独立性は、権限も専門性も持たない財政政策や社会政策の分野に踏み込む場合に、最も大きなリスクにさらされる」(Bloomberg)と証言するという。ウォーシュ氏は独立性を重視しているというよりは、共和党的な「小さな政府」という考え方の延長線上としてFRBの権限を弱めることを望んでいる模様である。

結果的に独立した「小さなFRB」を目指す算段なのだろう。例えば、FRBが経済に対してよりニュートラルな存在であるべきだ、という主張をするとすれば、少なくとも中立金利にまでは速やかに利下げをすべきであるという政策運営が正当化される。

最近、FRB高官はすでに政策金利が中立金利に近くなっている(更なる利下げはそれほど必要ない)という主張をすることが多いが、この主張はウォーシュ氏が議長になった際にも利下げをしなくて済むようなディフェンス的な発言という面もありそうである。

「財政政策や社会政策の分野に踏み込む」ことへの批判は、これまでのFRBのバランスシート政策への批判と考えることができる。むろん、トランプ政権(共和党政権)への悪影響を避けるため、すぐにFRBのバランスシート政策の問題を指摘する可能性は低いが、11月の中間選挙を終えた後は、バランスシート政策への言及が増え、FRBはある程度の対応をすることになるだろう。

バランスシート縮小(QT)の「やり方」によって市場への影響は異なるとみられ、今から動向を予想することは難しいが、ハードランディングが懸念される可能性もあるため、今後も議論をウォッチしていく必要がある。