米ワシントンでの植田和男日本銀行総裁の発言機会は、4月の金融政策決定会合での利上げの有無を探る上でヤマ場となる。市場の利上げ予想を後退させた13日の信託大会と比べ、発信内容に違いが出るのかが焦点だ。

植田総裁と片山さつき財務相の共同会見は、現地時間16日に開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など一連の国際会議に合わせて開かれる見通しで、通常はG20終了後に実施される。

経済・物価の見通しが実現する場合、日銀は利上げで緩和度合いを調整していく方針だが、4月会合での判断について現時点で明確な手掛かりはない。利上げの方向性を明確にしなかった信託大会と今回の記者会見での発信に変化が見られるかどうか、27、28日開催の日銀決定会合を前に市場は注視している。

植田和男日銀総裁

政策判断を難しくしている背景には、米国・イスラエルとイランとの戦争により中東情勢の緊迫が長期化していることがある。物価上昇と景気後退が同時進行するスタグフレーションが懸念される中、経済や物価への影響は一段と見極めにくくなっている。

インフレ抑制を重視すれば利上げでの対応となるが、景気下押しの回避を優先すれば政策金利は現状維持が選択肢となる。日銀は、足元の原油価格上昇が景気の下押しにつながるとみる一方、物価への影響は不透明と分析する。

片山財務相は15日開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、利上げは経済に悪影響を与える可能性があり、今は様子見との声が多かったと語った。同会議後、記者団の取材に応じた。

中東情勢の影響見極め

信託大会で代読された植田総裁の発言では、政策判断で重視している基調的な物価上昇率に関し、原油価格の上昇は「上下双方向に作用する」とした。景気の下押しを通じて基調が下振れる可能性がある一方、予想物価上昇率が上昇すれば基調を押し上げる作用があることにも言及した。

植田総裁が改めて情勢を慎重に見極める考えを示したことから、金利スワップ市場の利上げ予想は約45%から30%台前半に低下。足元では24%程度となっている。

サプライズで効果の最大化を狙う金融緩和と異なり、利上げは事前に市場への織り込みを進めるほうが望ましいとされる。昨年12月に利上げを実施した際には、植田総裁は決定会合前の講演で「利上げの是非について、適切に判断したい」と述べ、市場にシグナルを送っていた。

様子見の余地

国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は14日の記者会見で、日銀を含む主要な中央銀行が政策金利を引き上げる差し迫った必要性はないとの認識を示した。

中東情勢を踏まえた政策金利の見通しに関する質問に対し、日銀や米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中銀)といった主要中銀には様子を見る余地があると述べた。

IMFで日本経済に関する審査(対日4条協議)を担当するラフル・アナンド氏は15日、ブルームバーグのインタビューで、日銀に関して「市場期待を安定させる上で、明確なコミュニケーションは極めて重要」と指摘。緊迫する中東情勢など不確実性が高まる中では、市場との対話がいっそう重要性を増すとの見方を示した。

(片山財務相の発言を追加して更新します)

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