(ブルームバーグ):米国とイランの和平協議への期待を背景に日本株の「恐怖指数」が直近のピークから低下する一方、長期の予想変動率は高止まりしている。エネルギー供給ショックに対する日本の脆弱(ぜいじゃく)性への懸念が根強いことを示唆している。
オプション価格から算出し、市場が予想する今後1カ月の価格変動の大きさを示す日経平均ボラティリティー指数(VI)は、足元で30を下回った。日本版「恐怖指数」とも呼ばれる同指数は、過去10年平均(21台)と比べればなお高水準にあるものの、3月初旬に付けた60台からは大きく低下した。
これに対し、日経平均株価の1年物の予想変動率は米国・イスラエルによるイラン攻撃が始まった2月末以降、一貫して25を上回っている。これほど長期にわたって高止まりするのは、すう勢的に高水準だった2008-09年の世界金融危機時以降では例がない。コロナショック時でも25超えは17営業日連続にとどまった。
アムンディ・ジャパンの株式運用部コンベクシティー・ソリューション(アジア)ヘッドのフィリップ・イモフ氏は「日本の適応力をもってすれば、日本株の長期的な上昇ストーリーは変わらない」としつつ、石油危機の深刻さと長期化の度合い次第では相場変動が激しくなると指摘。「投資家は大きな値動きに備えるべきだろう」と話す。
オプションは資産を買う権利(コール)や売る権利(プット)を取引する金融派生商品で、買い手は損失を限定しつつ、相場の変動次第で大きな利益を得られる。オプション価格には将来の変動の大きさへの見方が反映され、予想変動率はその値付けに影響する重要な要因の一つだ。
日経平均は14日に終値で5万7000円台を回復し、開戦後の下げの8割超を取り戻した。ただ、オプション市場の指標によると、投資家は長期的なリスクに備えるためのヘッジに対し、依然高いコストを支払っている。
異なる日本の事情
米国とイランが直接交渉に踏み出したことで、戦争の最悪期は脱したとの期待が世界の株価を支えている。イランのウラン濃縮やホルムズ海峡の管理などを巡る主張の隔たりは大きいが、市場では2週間の停戦期限である22日までに合意に至らなくても和平協議は継続するとの楽観論が出ている。
米S&P500種株価指数は今週、開戦後の下げを帳消しにし、米国株の恐怖指数であるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)も20割れと戦争前の水準に戻った。
もっとも、原油の9割超を中東に依存する日本では事情が異なる。米国がホルムズ海峡の「逆封鎖」を開始したことで、エネルギーの逼迫(ひっぱく)度合いが強まる可能性が高く、資源価格の高止まりを通じて企業収益や株価の重しとなりやすい。
松井証券の窪田朋一郎チーフマーケットアナリストは、ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すれば「業績予想を下方修正する企業も多く出るとみられ、相場が下がるリスクは捨てきれない」と指摘。一方で、秋の中間選挙までにはトランプ米大統領が事態打開に動くと考えると相場の上振れリスクもあり、「オプションを保険的に買う動きが出ている可能性がある」と話す。
ノムラ・シンガポールの須田吉貴シニア・クロスアセット・ストラテジストは、「合意形成まで海峡閉鎖継続となれば、日本株にとって間違いなくネガティブ」とした上で、再交渉期待が残る中、短期的に米株高につれて上昇傾向を維持する可能性はあるとみる。ただ、決算シーズンが本格化するのに伴い利益確定売りが強まる公算が大きいとの見方を示した。
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