(ブルームバーグ):ホルムズ海峡が依然として事実上の封鎖状態にあることを巡り、そもそもなぜイランによる海峡の掌握を許したのか、またトランプ政権はなぜ武力での再開を試みないのか疑問の声が上がっている。
こうした疑問は11日にパキスタンの首都イスラマバードで開かれる停戦協議でも大きな焦点となりそうだ。同海峡の支配は依然としてイランにとって最も強力な交渉カードとなっている。
「海軍がホルムズ海峡を制圧しようとしなかったことに驚いている」と話すのは、中東で海兵隊の軍事計画に携わった経験を持ち、現在は戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問であるマーク・カンシアン氏だ。
「これは決して海軍にとって誇れることではない。この問題について実に45年も検討してきた。世界経済を救うべきその瞬間がついに訪れたにもかかわらず、完全に失敗した」と話す。
イランがホルムズ海峡を事実上封鎖できているのは、米軍の能力が欠如しているためではないと、米軍の元幹部やアナリストは強調する。
中央軍の元司令官、フランク・マッケンジー氏は今月、「米海軍には必要とあれば同海峡を開放し、その状態を維持する能力がある」とブルームバーグ・ラジオのインタビューで述べた。
ただ、それを実行するための継続的な軍事作戦には、実務および政治の両面で多くの課題を伴う。
中央軍の元副司令官、ロバート・ハーワード氏は「海軍にとってはそれほどリスクが高くないとしても、大統領にとっては政治的リスクが大き過ぎる可能性がある」と指摘。「あくまで推測に過ぎないが、護衛に当たる艦艇や要員を失うリスクは受け入れ難いと判断しているようだ」と語った。
ホルムズ海峡の船舶通航を維持することは決して容易ではない。
匿名を条件に語った米当局者によると、海軍による作戦が成功するには、海峡沿いのイラン側の領土や点在するイラン支配の小島を、空軍および地上部隊が制圧することが必要となる可能性が高い。
またアナリストによると、米国は艦船や航空機による護衛を通じて商業船を防護し、ドローンやミサイルによる攻撃を迎撃することが可能だ。あるいは海兵隊が湾岸各地の島々を制圧し、防空拠点を設置する方法もある。
しかし、このような対応には湾岸地域への空海戦力の大幅な増派が必要だ。そうなれば、米艦船へのリスクが高まるだけでなく、他地域から米国の戦力を振り向けることで世界にも影響が及ぶ。
さらに米軍艦が攻撃を受けて沈没し死者が出れば、「大規模な議会調査」が行われる公算が大きく、トランプ政権の残りの政策課題が頓挫(とんざ)する恐れがあると、海洋戦略センターのアナリスト、スティーブン・ウィルズ氏は指摘する。
ハドソン研究所のアナリストで、元海軍戦略担当者のブライアン・クラーク氏は「機雷については掃海艇で対処可能であり、大型商船が触雷した場合でも被害は管理可能だ」と述べた。「艦船の防空能力は巡航ミサイルの迎撃に優れており、紅海で確認されている」としつつ、「海上および空中のドローンは防空網を飽和させ得る」と指摘した。
今回の戦争では、2つの誤った前提が米国を後手に回らせた可能性がある。一つは、イランはこれまで海峡封鎖に踏み切ってこなかったため、今回も見送るだろうとの読みだ。またイラン指導部への迅速な攻撃が、米国により協調的な後継勢力の出現をもたらすとの想定も外れた。

さらに単独での戦闘行動に伴うリスクも浮き彫りした。ホルムズ海峡の再開に向けて、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)や中国、湾岸諸国に協力を求めても、支援は得られなかった。
一方、米国ユダヤ国家安全保障研究所のブレイズ・ミシュタル政策担当副所長氏は「イランは戦争開始当初、機雷や無人艇、高速艇、対艦ミサイルによって海峡を封鎖する海軍能力を有していたが、今ではこれが船舶に危険を与えているわけではない」と指摘。
「むしろ、特にドローンを中心とする持続的な空中からの脅威こそが商船の海峡通過を断念させている」と述べた。
海峡問題に詳しいある米当局者は、まずイラン海軍などの大規模な戦力投射能力を攻撃するという戦略は妥当だったとの認識を示した。ホワイトハウスによると、米軍はイランの艦艇150隻以上(うち16隻は軍艦)を破壊したほか、弾道ミサイル施設に対して450回以上の攻撃を実施し、ドローン発射部隊も800回にわたり標的とした。
もっとも、それだけでは海峡封鎖を回避するには不十分だった。今回の戦争により、湾岸地域からの原油および石油精製品の供給が日量2000万バレル以上不足する事態に陥り、米国の石油価格は3年ぶりの高値に押し上げられた。ホワイトハウスは10日、石油の供給が正常化するには2カ月を要するとの見方を示した。

原題:Iran’s Chokehold on Hormuz Strait Has White House on Defensive(抜粋)
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