マーケットコメント
4月7日の債券市場は堅調な推移だった。長期金利は前日差▲3.8bp、2年金利は同▲6.0bpと、イールドカーブはブルスティープ化した。この日は10年実質金利が同▲3.6bpとなった。インフレ懸念と景気悪化不安が同居する中、長期金利はレンジ推移となっている。
この日、ウィリアムズNY連銀総裁は基調的なインフレを巡る状況は「それほど変わっていない」(Bloomberg)と述べた。食品とエネルギーを除くコアインフレ率については、0.1~0.2ポイント程度の上昇にとどまるとの見方を示したという(同)。
原油高の影響がコアインフレに与える影響は読みにくいが、企業がトランプ関税のコストを消費者に転嫁する動きが限定的だったことを考慮すると、今回の原油高の影響もそれほどコアインフレには波及しない可能性はある。
また、原油高の影響がコアインフレに波及する頃には昨年来のトランプ関税の影響がベース効果によって剥落する可能性もある。
関税インフレが市場の想定よりも弱かったように、今回の原油高の影響も想定よりは大きくなかったという結果になる可能性が高いと、筆者は予想している。
なお、原油価格についても、市場が想定している見通しよりも下振れリスクが高いだろうと、筆者はみている。
むろん、現在のように供給制約が強い間は価格の高止まりが続く公算だが、制約がなくなれば大きく下がる可能性があるだろう。
市場では、イランがホルムズ海峡の通行料を徴収する方針を示していることなどを背景に、ホルムズ海峡の封鎖が終わっても原油価格が高止まりするという見通しがあるように思われるが、これは逆だろう。供給制約が解消されれば、原油価格は需給バランスで決まることになる。
仮に、通行料が上乗せされることになれば、通行料が上乗せされる分だけ原油そのものの価格にはディスカウントが求められるようになり、結果的に原油価格には下落圧力になることが予想される。
IMFは世界経済見通しを引き下げる公算
IMFのゲオルギエワ専務理事はBloombergのインタビューで、米国とイスラエルによる対イラン攻撃が成長率見通しに与える影響について、「戦争の影響を踏まえ、引き下げることになる」と述べた。
世界は新型コロナ禍前と比べて大きな景気減速への対応準備が不十分であり、そのための政策手段も弱まっていると警告したという。2022年のロシアによるウクライナ侵攻時は、世界経済はコロナ後の回復局面にあったため、需要側の懸念はあまりなかった。
今回は需要側の弱さにも配慮が必要な状況であり、インフレが短期で終わる可能性がある以上、各国の中央銀行は金融引き締めの判断には慎重になるだろう。
NY連銀調査の家計のインフレ予想は十分にアンカーされたと言える結果
NY連銀が公表した3月の消費者調査によると、1年先のインフレ予想が3.42%と、前月の3.00%から+0.42%ptとなった。2025年4月以来の高水準である。
もっとも、3年先のインフレ予想は3.08%で、前月の3.00%から+0.08%ptの上昇にとどまった。5年先のインフレ予想も3.05%と、前月の2.98%から+0.07%ptの上昇にとどまった。
過去の例を振り返ると、2021年5月に1年先のインフレ予想が前月差+0.63%ptとなって4.00%になったことがあったが、その際には3年先のインフレ予想も同+0.47%ptとなっていた(水準は3.57%)。当時は、1年先と3年先のインフレ予想がある程度パラレルに上昇していたことが分かる。
この例と比較すると、今回の2026年3月調査は「長期のインフレ予想は安定している(アンカーされている)」という評価で良いだろう。
調査期間は3月2〜31日であり、イラン情勢悪化の影響がすべて織り込まれているとは言えない。だが、長期のインフレ予想があまり上がっていないことが明らかとなったことから、FRBが利上げを急ぐようなことはないだろう。
国内の個人消費のデータは弱く、日銀が利上げを急ぐ理由はあまりない
イラン情勢の混乱が続く中、日銀は4月利上げを見送る可能性が高まっている。もっとも、日銀が早期利上げに動く必要がない要因は不透明感の強さだけではない。
ドル円は160円を大きく超える可能性が指摘されてきたが、実際には159円台の推移が長くなっている。高市政権発足以降から2026年2月くらいまでに円売りが続いていたことから、短期筋が円を売る余地があまり大きくないのだろう。
また、直近で公表された国内の個人消費のデータは芳しくない。
日銀が公表した2月の消費活動指数(実質、旅行収支調整済)は前月比▲0.4%となり、2026年1-2月の水準は2025年10-12月期対比で▲0.5%となっている。
総務省が公表した総消費動向指数(CTIマクロ、実質)は前月比横ばいにとどまり、前年同月比は+1.1%と、前月からプラス幅が縮小した。この数字は2025年8月の同+1.7%から鈍化が続いており、日本の個人消費には息切れがみられている。日銀が利上げを急ぐ必要性はあまりないだろう。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)