人工知能(AI)ブームの中心的人物であるジェンスン・フアン氏は今週、サンフランシスコで開かれた年次カンファレンス「ヒューマンX」にビデオ出演し、自身が今最も重視するテーマについて語った。市場の短期的な期待にとらわれず、AIの長期的な可能性に目を向けるよう企業経営者に呼び掛けた。

エヌビディアの最高経営責任者(CEO)であるフアン氏は、主催者のステファン・ワイツ氏との対談で、AIの可能性に対して柔軟な姿勢を持ち、成果が測定可能になるまで忍耐強く待つべきだと強調した。この考えの背景には、AIの普及は産業革命に匹敵する歴史的変化だとの認識がある。現在はその大きな転換の初期段階にあり、短期的な目標にとらわれて全体像を見失うべきではないと主張する。

同氏は「もっと柔軟に、先入観にとらわれず、懐疑的・冷笑的になり過ぎず、積極的に実験する姿勢を持つべきだ」と述べ、「時間や資金の無駄を恐れる必要はない。投資しても見返りを求めない時期もある」と語った。

さらに、AIツールに対して投資利益率(ROI)を求めるべきではないとも指摘した。そうした姿勢は、「思いがけない発見」をする機会を企業から奪う可能性があるという。

もっとも、フアン氏自身も認めるように、こうした主張は同氏の立場だからこそ言える面もある。エヌビディアはAI向け半導体の最大手であり、今年度の売上高は2023年度比で10倍超に達する見通しだ。売上高1ドル当たり75セントを粗利益として確保している。

こうした楽観的で拡張志向の思考こそが、米テクノロジー企業が新たなアイデアの急速な普及を実現し、資金面で支える力の源泉となっている。一方で、シリコンバレーが多額の資金を投じても大きな影響を受けにくい理由でもある。

もっともフアン氏は、資本主義の厳しさも熟知している。エヌビディアは初期に技術選択を誤り、経営危機に直面した経験がある。インテルとの競争の中で長年生き残りを模索してきた同氏は、現在大きな機会を迎え、急増した資金を他社への投資に振り向けている。

データセンターへの巨額投資の回収見通しを巡る疑問が高まる中、そうした問いに対するいら立ちに近い感情を示しているのはフアン氏だけではない。ただし、こうした疑問は妥当であり、有益でもある。

エヌビディアは上場企業であり、四半期ごとに財務情報の開示が求められる。公表された業績は4兆5000億ドル(約717兆円)という時価総額を裏付けており、一部指標では割安とさえ評価される。一方で、非上場の大手AI企業については状況ははるかに不透明だ。

OpenAIやアンソロピックのトップらは、AI需要が爆発的に拡大しており、制約は稼働可能なコンピューターの数だけだという主張の中心的な存在だ。今週、アンソロピックは年換算の売上高が300億ドルを超え、年間100万ドル以上を支出する法人顧客が1000社を超えたと明らかにした。これは、ブロードコムが設計したグーグルの半導体を利用する取り組みの一環として発表されたものだ。

この発表は特にブロードコムにとって好材料と受け止められ、株価は上昇した。ただし、これらAIスタートアップ2社が上場し、損益計算書や貸借対照表を全面的に開示するまでは、見栄えの良い売上高成長だけでは実態は見えにくい。重要なのは、その売上高を生み出すためのコストがどの程度かという点だ。

こうした2社の下には、AIを活用して経済のさまざまな分野を変革しようとする企業が数多く存在し、投資家からの資金調達も活発だ。しかし資本主義の現実は厳しく、多くの企業はその試みの成果を見る前に淘汰(とうた)される可能性が高い。こうした企業が疑問や懐疑にさらされること自体は健全であり、過剰を抑える上で本来あるべき姿だ。

エヌビディアの躍進を率いるフアン氏にとっても示唆的な予測がある。ジョン・ペディ・リサーチによると、現在AIプロセッサーを製造、ないし製造を計画している135社のうち、2030年まで存続するのは25社程度にとどまる可能性が高い。

原題:Nvidia’s Huang Urges AI Promise Over Quick Return: Tech In Depth(抜粋)

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