試行開始から10年、全国導入へ向けた動きが加速

中国では近年、急速な高齢化の進展を背景に、高齢者の介護ニーズが急増している。

家族機能の変容や都市化の進展により、従来の家族介護に依存した支援体制には限界が生じつつあり、公的な介護保障制度の整備が重要な政策課題として浮上している。

こうした中、2016年以降、中国は公的介護保険の試行を段階的に拡大し、現在では92地域において制度運用が行われている。

これは都市ベースでみれば、おおむね3割程度の地域で導入が進んでいることになる。

しかし、これまでの試行は地域ごとの制度設計に委ねられてきたため、財源構造や要介護認定基準、受けられる介護サービスなどに大きな差異が存在し、地域によって制度格差が大きい点が指摘されていた。

このような状況を踏まえ、2026年3月25日、国務院は介護保険制度の普及を促進するための意見を公表した。

本意見は、従来の試行中心の段階から一歩進み、2028年をめど(3年以内)に全国導入という目標を提示した点に特徴がある。

導入期限を明示するとともに、全国的な制度整備を見据えた方向性を打ち出したことは、中国の介護保険制度にとって重要な転換点と位置付けられる。

本稿では、この新たな政策の内容を整理するとともに、中国における介護保険制度の制度設計の特徴と今後の課題について検討する。