マーケットコメント
6日の米国市場は、米国とイランの停戦に向けた期待からダウ平均が反発した。
もっとも、ホルムズ海峡の解放を求めているトランプ大統領は7日午後8時(日本時間8日午前9時)の交渉期限までにイランが応じなければ、すべての橋と発電所を破壊すると述べており、状況が悪化する可能性もある。
楽観論と悲観論が同居する状況にあり、市場は一方向に動きにくい展開となっている。
また、イラン情勢に関するヘッドラインに注目が集まる中、米経済の下振れリスクにも注意が必要だろう。
市場では3月の雇用統計が堅調だったことで楽観論が広がっているが、3月にイラン情勢が悪化してすぐに労働市場が悪化するということは現実的ではないため、楽観論は続きにくい。冷静に経済への波及パスを考えると、①ガソリン高によって家計が節約志向を強めたり、②株価の調整によって逆資産効果が強まったりすることで、家計のセンチメントが悪化し、個人消費が伸び悩むかどうかという点が試金石となる。
筆者は、2月までの米経済が資産家による消費の強さに支えられていたことを考慮し、逆資産効果によって個人消費の弱さを示すデータが得られることになるだろうと予想している。
仮に米国とイランが停戦に至ったとしても、楽観論への揺り戻しは限定的だろう。
この日は債券市場も小動きだった。
長期金利は前日差▲1.0bp、2年金利は同+0.8bpとなった。FF金利先物市場では、年内の利下げ観測がほぼなくなった状態が続いている。
3月雇用統計が堅調だったことで、FRBがすぐに利下げに動く必要はないという見方が多くなっている。
原油高がインフレを押し上げることで利上げが必要になるという見方があるものの、景気の下振れ方向に作用すれば利下げが必要になる可能性もある。
市場は利下げも利上げも織り込みにくい状況が続くだろう。この日に公表された3月のISMサービス業PMIは、市場予想を下回ったが、インフレの関連指標は大幅に上昇した。市場が評価に迷う結果だったと言える。
この日、ハマック米クリーブランド地区連銀のハマック総裁は政策金利を「かなりの期間」据え置くことが望ましいと述べた(Bloomberg)。
先行きについては、労働市場が顕著に悪化した場合は「利下げが必要となるシナリオも想定される」とした上で、「インフレ率が目標を上回る状態が続く場合には、利上げが必要になる可能性もある」とした(同)。
要するに、現時点ではスタンスを明確に定めていないということだろう。
なお、前述したように筆者は個人消費に下振れリスクがあるとみているため、夏ごろ(早ければ6月、おそくとも9月)には利下げが実施されると予想しているが、データを待つ必要がある。
〈ISM指数では分からない需要側の動向が重要〉
3月のISMサービス業PMIは54.0と、市場予想(Bloomberg調べ)の54.9を下回った。
原油高などによって仕入価格指数が70.7と、前月の63.0から大幅に上昇した。
ISMによると、今回の結果は実質GDPが年率で+1.9%となることに相当するということで、それほど悲観する結果ではない。
企業の主なコメント(筆者訳。以下同)によると「中東における輸送の混乱により、同地域からの貨物の入出荷が阻害されている。
中東の複数のサプライヤーから不可抗力の通知を受けているが、海運を除けば、事業運営は概ね通常レベルで、中断はない」(建設業)と、直接的な悪影響は限定的であるという状況だった。
しかし、「イランでの戦争は、すでに不安定なマクロ経済情勢にさらなる不確実性を加えている。
原油価格の高騰によるインフレの急上昇は購買力を低下させ、あらゆる産業に影響を及ぼすだろう」(不動産、賃貸・リース)と、センチメント悪化を懸念する声もあった。
コロナ後のインフレ局面と比較し、今回は需要側の弱さに不安があるため、企業側(供給側)の状況だけで先行き経済の行方を判断することはできない。