サステナ疲れの時代に必要な設計
このことは、いわゆる「サステナ疲れ」の原因を考えるうえでも示唆的である。
ニッセイ基礎研究所の分析では、若年層はサステナビリティに無関心なのではなく、学校教育などを通じてその重要性を理解しているものの、実際に行動に移すこととのあいだには距離があり、その距離は、単にサステナビリティの理念の正しさや必要性を伝えるだけでは埋まりにくいとされる。
逆に、正論を重ねるほど、気持ちのうえでは賛成していても、実際には一歩を踏み出しにくくなる(制約が働く)こともある。
その結果、自身の自己効力感(やればできる、という感覚)や有効感(自分が踏み出せば社会に影響を与えられる、という感覚)が損なわれ、疲れだけが先行してしまいかねない。
これが、サステナ疲れやエシカルバーンアウト(エシカルな行動を意識し過ぎて、逆に燃え尽きてしまうこと)の遠因となる。
可視化から優先順位へ
では、20代向け施策では、何をどのような優先順位で考えていくべきなのだろうか。
あるターゲット層に向けた広告等のコミュニケーション施策は、マーケティング関連のコミュニティでは広く「訴求」と呼ばれることがある。
サステナビリティ関連の訴求には、いくつかのパターンが見られる。
たとえば、未来や子どものためといった正しさや責任を訴える「規範訴求」、自分の暮らしにも関係すると伝える「自分ごと訴求」、普段の生活の中で無理なくできると示す「日常導入訴求」、調べる・周囲と話す・共有するといった関わりを促す「社会関与訴求」、選択の意味や違いを見える形で示す「可視化訴求」などである。
ここでは、こうした5つのパターンのコミュニケーション施策の仮説を置いてみたい。
この中で、20代のサステナブル行動意識に最も強く影響する訴求はどれだろうか。
簡単なシミュレーションを行うと、最も影響が大きいのは「社会関与訴求」ということがわかる。
若年層にとって、調べたくなる、話したくなる、共有したくなるといった「社会との関わり」意識は、それだけで行動への入口になりやすい。
また、従来からよく見られる「規範訴求」(サステナビリティの正しさや責任を訴える)や「自分ごと訴求」(自分の暮らしにもサステナビリティは関係すると伝える)は、そこまで大きな影響を与えておらず、いわば「否定されないが、刺さり切らない」訴求となっていることが伺える。
行動の意味づけには有効ではあるものの、行動との繋がりにはどうしても弱さが残る。
むしろ逆に、行動上の「障壁意識」(「手間がかかりそうだ」「時間やお金に余裕がない」といった行動上のハードルを感じる気持ち)を助長してしまっているようにも考えられる。



この結果に基づけば、20代施策の優先順位として、まず「関わりたくなる状態」をつくることを軸に置き、その次に意味や成果が見えるようにし、その上で日常の中に入りやすくする、という機序で考えていくと受容されやすく、効果も見込みやすい。
この点から見れば、研修や教材を通じてサステナブルな理念や正論をどんどん追加していくというより、活動への入りやすさや続けやすさといった、「サービス設計」や「ユーザー体験の設計」の方がより重要な課題であるとも言える。
なお、シミュレーションの一環として、解析したモデルに基づき、生成AI環境において20代のペルソナ(人物像)として「A君」を設定し、「社会関与訴求」を提示(入力)したところ、A君から
「こういう形なら入りやすいかも。いきなり『ちゃんとやりましょう』って言われるより、まず見てみようかなって思える。ちょっと調べてみたいし、友だちがどう考えてるかも気になる。自分ひとりで背負う感じじゃないのがいい。」
という反応(出力)が観察された。これはデータに基づいて生成AIで理論的に再構成された声に過ぎないが、20代にとっての魅力が「関われる感じ」にあることがわかりやすく伺える反応である。