(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、拡大しつつある世界的なエネルギー危機の緩和に向け、海上輸送の要衝であるホルムズ海峡の航行再開を急いでいる。しかし、停戦なしにそれを実現するのは容易ではない。
イランによる断続的な船舶攻撃や機雷のリスクにより、ホルムズ海峡の通航はほぼ停止状態となり、海上輸送の主導権は他国の海軍ではなく、イランが事実上、握っている。同海峡は世界の石油の約5分の1の輸送経路となっており、今回の混乱はアジアや欧州などに生産削減や燃料不足、価格上昇をもたらしている。
トランプ氏は同盟国に対し、ホルムズ海峡の航行再開を支援するための軍艦派遣を要請し、商船護衛のため多国間の海軍護衛体制を提案してきた。
だが欧州やアジアのパートナーは慎重姿勢を崩していない。ドイツや日本などは、船舶に脅威を与えるイランの戦略に少数の艦船で対抗できるのか疑問視している。当局者によると、新たに海軍戦力を投入しても、既に同地域に展開している、大規模な米軍の存在に比べて効果は限定的で、ホルムズ海峡の実質的な封鎖解除に必要な水準には到底及ばない。
元ホワイトハウス当局者で現在はコンサルティング会社ラピダン・エナジー・グループの社長を務めるボブ・マクナリー氏は、「ホルムズ海峡の安全確保には数週間を要する可能性がある」と述べた。「機雷や高速攻撃艇、潜水艦、ドローンといったイランの多層的な非対称戦力を無力化するまでは、商船はもちろん、護衛艦であっても通航させたくない」と指摘した。
各国の消極的な姿勢を受け、トランプ氏は17日、米国はもはや北大西洋条約機構(NATO)加盟国や日本、オーストラリア、韓国の支援を必要としていないとSNSで表明した。ホルムズ海峡への言及はなかった。
イランの意向次第
戦闘が続く中、通航は事実上、イランの意向次第となっている。少数の船舶がイラン沿岸近くを航行してホルムズ海峡を通過しており、通航が他国の護衛ではなくイランの承認に依存していることがうかがえる。結果的に、海峡は正式には封鎖されていないものの、アクセスは管理され、通常の商船航行は困難な状況が続いている。
米国の護衛構想の懐疑派は、アラビア半島の反対側に位置する紅海で最近あった事例を引き合いに出す。そこではイエメンの親イラン武装組織フーシ派が、米国などによる空爆にもかかわらず、イランと同様の戦術でバベルマンデブ海峡の通航を妨害した。
英国のスターマー首相は16日、同国は今回の戦争に引きずり込まれないとし、ホルムズ海峡の再開は「容易ではない」と述べた。「海峡に影響が及んだ他の紛争の事例を見れば分かる」と語った。
17日にはフランスのマクロン大統領が、現状では作戦に参加しないとしつつ、状況が落ち着けば護衛体制の構築で各国と協力する用意があると表明した。
英国海軍の元将校で、ペルシャ湾に派遣された経験があるトム・シャープ氏は「軍事的解決は最善とは言えない。むしろ政治的な問題だ」と指摘。「現在のイランの行為は、紅海でフーシ派が行っていたことと同じだ。数発の攻撃だけでも船舶を遠ざけるには十分だ」と述べた。
たとえ米国が護衛のための有志連合を結成できたとしても、その効果は限定的で、通常の通航回復には程遠い。
海峡は最も狭い地点で幅約30マイル(約48キロ)と狭く、航路はミサイルやドローン、小型艇の攻撃が容易に届く範囲にある。保険会社や銀行は、制裁リスクや攻撃の危険性から、イランに近い航路に対して引き続き慎重姿勢を取る公算が大きく、引き受けや資金供給は難しい状況が続く見通しだ。
トランプ氏も週末、攻撃のリスクが続いていることを認めた。イラン軍は既に完全に壊滅したとしつつ、イランがドローンや機雷、短距離ミサイルによって船舶を脅かし続けるのは「容易だ」と述べた。
原題:Hormuz Reopening Looks Unlikely Without a Ceasefire in Iran War(抜粋)
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