世界最大である日本の産業用ロボットのサプライチェーン(供給網)は、人工知能(AI)によって変革できると、シリコンバレー発のAIスタートアップが証明しようとしている。

元グーグル研究者のジャド・タリフィ氏とニマ・アスガーベイギ氏が5年前に設立したインテグラルAIは、ロボットや自動運転車などの自動化システム向けAIモデルを開発している。2021年から自動車部品メーカーのデンソーと協力し、産業用ロボットにデモンストレーションを観察させることで新しいスキルを学習させている。

従業員15人のインテグラルAIは、トヨタ自動車やソニーグループ、ホンダ、日産自動車、三井化学とも初期段階の協議を行っており、AIモデルが製造プロセスをどのように進化させられるかを提案している。次のステップは、人間のオペレーターがロボットに「コーヒーを淹れて」などの言語プロンプトを与え、ロボットが自らそれを学習する方法を確立することだと、タリフィ氏はインタビューで語った。

日本はファナックや安川電機をはじめとする世界最大級の産業用ロボットメーカーの本拠地だ。ソフトバンクグループは昨年、スイスのABBのロボティクス事業を買収すると発表した。また、三菱電機や川崎重工業などは、ファクトリーオートメーション(FA)の特定分野で支配的な地位にある。国際ロボット連盟によると、世界で供給される産業用ロボットの約29%は、日本企業が出荷している。

「日本はロボット工学で強いが、AIとコンピューティングでは強くない」ため、インテグラルAIに果たせる役割があるとタリフィ氏(42)は述べた。

タリフィ氏は2013年にグーグル初の生成AIチームを立ち上げた。子供の学習方法を模倣するためのAIアーキテクチャーとアルゴリズムの構築では、脳の新皮質の仕組みが鍵を握ると見なすAI博士号取得者が増えており、同氏もその一人だ。

タリフィ氏の目標は、少ないデータから情報を抽出でき、以前のデータを誤って削除せずに新しい情報を処理できるAIモデルを作成することで、これは学習に不可欠だ。このようなモデルは、企業がフィジカルAIを推進し、電池の新設計や新しい素材の発見、創薬、ヒューマノイド(人型)ロボットの駆動といった高度なタスクを扱えるようにするだろうと同氏は語った。

最終的な目標は、ロボットがロボットを構築できるようにすることだ。「料理ロボットや清掃ロボット、iPhoneを組み立てる工場ロボットを作ったりするかもしれない」と同氏は述べた。

自己学習能力は、いずれ機械をアップデートの必要性から解放する可能性がある。OpenAIのChatGPTやグーグルのGeminiなど、既存の大規模言語モデルは、人間主導の訓練をさらに必要とし、柔軟性や効率性、信頼性を制限する可能性があると、タリフィ氏は指摘する。

幼少期に戦乱のレバノンで生死の危機に直面したタリフィ氏は、「AIで真に意味のある影響を与えるには、デジタル世界だけでなく物理世界に影響を与える必要がある」と早くから気づいた。これについては、24年に未来学者で作家のニコラ・ダナイロフ氏との「Singularity.FM」ポッドキャストのインタビューで語っている。

これまで約550万ドル(約8億7400万円)を調達したインテグラルAIは現在、自社モデルを拡大して公開する準備を整えるため、新たな調達ラウンドで約1000万ドルの調達を目指している。大手テクノロジー企業のAI投資に比べれば微々たる額だが、アルゴリズムを迅速に開発するには十分だとタリフィ氏は話す。同社は今年後半に予定する「ジェネシス」モデルの公開後、より大規模な拡大を目指す。

インテグラルAIの「主張は極めて大胆だ」と、ダナイロフ氏は最近のインタビューで指摘。「しかし、既存のパラダイムを使ったり再現したりする余裕がない場合、新しいものを発明するしかない」と語った。

原題:Ex-Google Researcher Seeks to Transform Japan’s Robots With AI(抜粋)

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