韓国の合計特殊出生率(以下、出生率)が再び上昇した。

韓国国家データ庁の2月25日の発表によると、韓国における2025年の出生率は0.80で、過去最低だった2023年の0.72と2024年の0.75を上回った。出生率が0.8人台に回復したのは、2021年(0.81人)以来4年ぶりである。

2025年に生まれた子どもの数は、25万4457人で、2023年の23万8300人より1万6,140人増加した。対前年比増加率は6.8%で、2010年以降15年ぶりの最大増加幅であり、年間統計作成が始まった1970年以降で4番目に高い増加率である。

出生率が2年連続上昇した理由は?

韓国の出生率が改善した背景には、大きく三つの要因があると考えられる。第一は、人口構造の変化による要因である。

すなわち、年間70万人以上が出生した1991~1995年生まれの世代が現在30代前半に入り、婚姻適齢期を迎えたことにより、婚姻件数が増加に転じた点が挙げられる。

韓国の婚姻件数は、1996年の434,911件をピークとして、その後は長期的な減少傾向を示してきた。特に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2021年には192,507件と、統計開始以来初めて20万件を下回った。

さらに、2022年には191,690件まで減少し、婚姻件数が19万件を割り込む可能性も懸念される状況にあった。

しかしながら、2023年以降は婚姻件数が増加に転じている。2023年の婚姻件数は193,657件と前年比で1,967件増加し、さらに2024年には222,412件、2025年には240,370件へと増加し、回復傾向がより明確となっている。

このように、出生数の多い世代が婚姻適齢期に入ったことにより婚姻件数が増加し、それが出生率の改善に一定の影響を与えたものと考えられる。

第二は、新型コロナウイルス感染症の拡大により結婚を先送りしていた若年層が、感染状況の改善に伴い、近年になって結婚に踏み切ったことである。

2020年から2022年にかけては、感染拡大に伴う社会的制約や先行きの不確実性の高まりにより、結婚式の延期や結婚自体を見送る動きが広がり、婚姻件数の減少につながったと考えられる。

しかしながら、2023年以降は感染状況の落ち着きとともに社会経済活動が正常化し、それまで結婚を先送りしていた層が順次結婚に踏み切るようになったことで、婚姻件数の増加につながったものとみられる。

このような、いわゆる「結婚の繰り延べ」の反動による婚姻の増加も、出生率の改善に影響を与えた要因の一つであると考えられる。

第三は、出産に対する意識の変化である。近年、結婚や出産に対する価値観に一定の変化が見られており、出産に対する前向きな認識が徐々に高まっている。

韓国政府が2024年11月に発表した社会調査結果によれば、「結婚について肯定的」だと回答した割合は、2018年の48.1%から2020年には51.2%に、2024年には52.5%に上昇した。

また、「結婚後に子どもを出産する必要がある」と認識している割合は、2022年の65.3%から2024年には68.4%へと3.1ポイント上昇している。

このように、結婚や結婚後の出産を肯定的に捉える意識が強まっていることは、実際の出生行動にも一定の影響を与えている可能性がある。

出産に対する意識の変化は、政府による少子化対策の強化や子育て支援の拡充、さらには社会全体における結婚・出産に対する認識の変化など、複数の要因が複合的に作用した結果であると考えられる。

このような意識の変化も、近年の出生率の改善をもたらした要因の一つとして位置付けることができる。

日韓が手を携え、少子化を乗り越える時

では、韓国の出生率は今後も上昇し続けるのであろうか。1991~1995年生まれの、出生数が多い世代が現在30代前半に入り、婚姻適齢期を迎えていることから、短期的には出生数が増加する可能性がある。

しかしながら、中長期的な見通しは依然として楽観できる状況にはないと言わざるを得ない。

出産の中心世代における出生率の低下に歯止めをかけ、一定水準を維持するためには、単発的な給付措置や一時的な支援策では不十分である。

長期的かつ持続的な政策支援の積み重ねが不可欠であると同時に、結婚や出産に対する社会全体の価値観や意識の変化も求められる。

さらに、大学進学を過度に重視する教育システムの見直しを通じて無用な競争や労働市場とのミスマッチを解消すること、大企業と中小企業の間に存在する賃金・雇用条件の格差を是正することも重要な課題である。

加えて、複数の政策を組み合わせて同時に実施することが出生率の改善に効果的であると指摘する研究もある。

一方、日本に目を向けると、厚生労働省が2月26日に公表した人口動態統計速報によれば、2025年に日本で生まれた子どもの数(外国人を含む速報値)は70万5,809人となり、前年比2.1%減少し、10年連続で過去最少を更新した。

少子化の背景には韓国と共通する構造的要因が存在するが、とりわけ婚姻適齢期人口の減少が出生数の減少に直結している点は見逃せない。

韓国においても、今後この年齢層の人口が減少局面に入れば、出生数が再び減少する可能性は高いと考えられる。

このように、日本と韓国はともに深刻な少子化に直面しているが、その背景や政策対応には共通点と相違点が併存している。だからこそ、両国がこれまで蓄積してきた経験や政策効果を共有し、相互に学び合う意義は極めて大きい。

両国は経済発展の段階、家族観、教育に対する価値観、雇用慣行などにおいて多くの共通点を有している。欧州諸国の事例は重要な示唆を与えるものの、文化的背景や社会構造の違いという観点から、そのまま適用することには限界がある。

その点、日本と韓国は社会構造や制度的環境が比較的近接しており、政策移転の実現可能性が高いと考えられる。また、成功事例のみならず、十分な成果を上げられなかった施策についてもお互いに共有し、検証することが重要である。

そのような相互学習の積み重ねを通じてこそ、より実効性の高い少子化対策の構築が可能となるだろう。

さらに、少子化対策は短期的な成果を追求する分野ではなく、長期的かつ一貫した取り組みが求められる課題であり、政策の継続性、社会的合意の形成、若年世代の価値観の変化への対応など、いずれも時間を要する。

したがって、政府間協力にとどまらず、研究者、企業、地方自治体、市民社会を含めた多層的な交流と共同研究の枠組みを構築することが不可欠である。

少子化問題をはじめとする共通課題に対して、民間の専門家等が共同で参画し、継続的に議論を重ねる日韓共同委員会を設立することも、有効な方策の一つであると考えられる。

少子化は、単なる人口統計上の現象にとどまるものではなく、社会構造や制度の在り方そのものを問い直す契機でもある。したがって、この問題に向き合うことは、社会の持続可能性を再構築する営みにほかならない。

日韓両国がこれまでの経験を謙虚に学び合い、政策的知見を共有しながら、次世代が将来に希望を抱くことのできる社会の実現に向けて協力を深化させるならば、この未曾有の人口危機も決して克服不可能な課題ではないであろう。

少子化という共通の課題に対し、日韓が手を携えて真摯に取り組むことこそ、未来世代に対する両国の重要な責任である。


※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金明中
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