(ブルームバーグ):トヨタ自動車グループは2日、豊田自動織機に対する株式公開買い付け(TOB)価格を従来の1万8800円から2万600円に引き上げると発表した。TOB価格引き上げを求めていた物言う株主(アクティビスト)米投資ファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントも条件付きで合意し、成立に向けて前進した。
トヨタの広報担当者によると、買収総額は直近のTOB価格では約5兆4000億円だったが今回の引き上げにより約5兆9000億円に増える。ブルームバーグのデータによると、取引が成立すれば日本企業に対する史上最大の買収となる。また、日本企業が買い手となる買収という分類でも武田薬品工業によるシャイアー買収に次いで2番目の規模だ。
買収手続きを進めるトヨタアセット準備が同日、関東財務局に提出した資料によると、新価格での買い付けに必要な資金分の融資証明書を三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行から取得できることなどを条件として、エリオットは所有株を応募する意向という。トヨタグループ側とエリオット側は1日付でTOBの応募に関する契約を締結したといい、2日までだったTOB期間は16日まで延長される。

トヨタ不動産の近健太取締役は会見で、TOB価格を引き上げた背景について、株主との対話や市況環境の変化を踏まえたと説明。引き上げ後のTOB価格は豊田織機の本源的価値を反映しており、市場価格からみても「適切な提案であることを踏まえると、多くの株主の皆様に応募いただけるものだと思っている」との見方を示した。
銀行からの融資証明書取得に向けては「順調に進捗(しんちょく)」していると述べた。近氏はトヨタの最高財務責任者も務め、4月1日付でトヨタの社長に昇格することが決まっている。
エリオットもこの発表内容を追認する声明を公表。TOB価格の引き上げは同社とトヨタグループの間の数カ月にわたる交渉を踏まえたもので、少数株主にとってより望ましい結果をもたらすと同時にトヨタグループ内にとどまらず日本市場全体における持合株式の解消を促進すると信じているとした。
増額後のTOB価格は当初の価格からは26%のプレミアム、1月に最初の引き上げが公表された価格に対しては10%のプレミアムが付された水準になるという。
発表を受けて、豊田織機の株価は午後の取引で上げ幅を拡大。一時前日比2.6%高の2万765円とブルームバーグの記録に残る1974年9月11日以来の日中高値を付けた。終値は2万535円だった。
ウィンウィン
企業の合併・買収(M&A)を専門とする京都大学の松本茂特命教授は電話取材で、エリオットがTOBに応募することで「成立の可能性は高まった」と述べた。エリオットは価格の引き上げを勝ち取り「それなりのリターンを得たのは間違いない」と指摘。対抗の買収提案を出していないエリオットとしてもトヨタ陣営が計画をとりやめることは望ましくなく、同社としても「ここで折り合いをつける意味があった」と述べた。

トヨタの源流企業である豊田織機のTOBを巡っては、国内最大の企業グループと世界有数の物言う株主として知られるエリオットが対立する異例の事態となっていた。
トヨタグループは昨年6月に豊田織機に対するTOBを発表した際のTOB価格は直前の株価を下回っていたため海外投資家を中心に不満の声が相次いだ。トヨタグループは1月にTOB価格を約15%引き上げたものの、その後豊田織機の株価は改訂後の買い取り価格を上回って推移し、TOBの成立が危ぶまれていた。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、トヨタグループ側は当初より買収資金は膨らんだものの、豊田織機の非公開化という究極の目的を果たせたと指摘。エリオットも従来よりも高い価格で売却できるほか、一連の情報発信で知名度が上がり、今後、TOB案件に関わる際に影響力が増す可能性があるとし、「双方が痛み分けというよりは、ウィンウィン」とみていると述べた。
エリオットが豊田織機の大株主として浮上した11月以降、同社はトヨタ陣営が豊田織機の価値を過小評価しているとしてTOBに異議を唱えてきた。持ち分を段階的に7.14%まで増やしたほか、豊田織機単独での企業価値向上に向けた計画を発表するなどトヨタグループに対する圧力を強めてきた。
トヨタグループは2月12日、同日までとしていたTOB期間を3月2日まで延長し、価格については引き上げの考えはないと改めて表明していた。2月12日までにTOBに33.1%の応募申し込みがあったという。TOB成立の下限は42.01%に設定されている。
(トヨタ幹部のコメントを追加して更新します)
--取材協力:鈴木英樹.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.