米国の月次雇用統計が市場予想を上回るとドルが上昇するという10年にわたる傾向が、終わりを迎えつつある。これは「相関関係の転換」であり、今後は米雇用市場の強いデータを受けてトレーダーがドルを売る局面になると、ゴールドマン・サックス・グループの元ストラテジスト、ロビン・ブルックス氏が指摘した。

現在はブルッキングス研究所の上級研究員を務めるブルックス氏は、市場が米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げを見込んでいると指摘。FRBが長期の名目利回りを抑制する中、堅調な雇用を受けてインフレ期待が高まれば、実質利回りは低下する。これが米資産の魅力を弱め、最終的にはドル安につながる可能性があると説明した。

ブルックス氏はインタビューで「市場にはトランプ政策に対する懐疑的な底流がある。政策は一貫性を欠き、変動が激しい。FRBへの度重なる攻撃もあった」と述べた。

Robin Brooks

「こうした動きはすべて、低金利志向が背景にある。市場はその点を頭の片隅に置いているのだと思う」と同氏は付け加えた。

この現象を示す例として、2月11日に発表された1月の雇用統計が挙げられる。予想を上回る内容だったにもかかわらず、ドルを押し上げる効果はほとんどなく、むしろ逆の動きとなった。ブルームバーグのドル指数は下落して同日の取引を終えた。

さらに、ブルームバーグがまとめる米労働市場サプライズ指数(米労働市場がエコノミスト予想を上回っているか下回っているかを示す)とドル指数の6カ月相関を分析すると、相関は約6年ぶりの大幅なマイナスになっている。

 

「米国の成長が他国よりも強いのに、どうしてドルが下落するのか。相関関係が転換したからだ。実際、何年もの前例がある」とブルックス氏は述べた。

直近の雇用統計を巡る値動きは同氏に、世界金融危機後の時期を想起させた。当時はFRBのバランスシート拡大政策が名目利回りを抑制していたため、良好な雇用統計を受けてドルが下落する局面がしばしば見られた。

投資家やストラテジストの間では、さまざまな理由からドルに対して弱気な見方が広がっている。主な要因は、特に通商政策を巡るトランプ氏の政策の予測不可能性が米資産保有の魅力を損ねていることだ。また、複数の指標でドルが依然として割高とみられていることも挙げられる。

ブルックス氏は、FRBに対する政治的圧力がドルと雇用市場の関係変化を促しているとの見方を示した。これが同氏が2026年のドル相場見通しをドル安へと変更した理由でもある。

「われわれは新たな時代に入りつつある」とブルックス氏は語った。「米経済は今年、力強く拡大するだろう。しかしドルは下落する」。

原題:Ex-Goldman Strategist Sees ‘Regime Change’ in Dollar-Jobs Link(抜粋)

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