厚生労働省薬事審議会の専門部会は19日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った再生医療製品2種について、製造販売の条件・期限付き承認(早期承認)を了承した。同技術を用いた医薬品が実用化されるのは世界初で、日本が成長分野と位置付けてきた細胞医療の商業化が節目を迎える。

了承を受けたのは、大阪大発ベンチャーのクオリプスによる重症心不全向け「リハート」と、住友ファーマのパーキンソン病治療薬「アムシェプリ」。

厚生労働省の発表によると、2社は製造販売について7年間の承認期間を得たうえで、追加データの収集は引き続き行わなければならない。専門部会の了承判断は厚生労働省に送られ、最終的な承認を得る見通しだ。

リハートは、薬や従来の治療法では効果が不十分な虚血性心筋症に対して、iPS細胞から作った心筋細胞シートを心臓の表面に貼り付けることで、血管の再生を促す物質の分泌などを通じ、心機能の改善を目指す。

アムシェプリは、パーキンソン病によりドーパミンが減った患者に、iPS細胞からドーパミン神経前駆細胞を作製し、脳内に移植する。運動機能の改善効果が期待されるという。住友ファーマの木村徹社長は2025年5月、再生・細胞医薬事業について、「30年代の半ばには1000億円と、その後には3500億円の事業にできるように進めていく」と述べていた。

住友化学と住友ファーマは24年、再生・細胞医薬の事業化を加速するため、新会社ラクセラを共同出資(住友化学66.6%、住友ファーマ33.4%)で設立した。

株式市場はすでに承認審査の動きを織り込んでいた。13日にクオリプスと住友ファーマが審議予定だと公表した後、住友ファーマ株は2400円前後から一時3200円台まで上昇。クオリプス株も、9500円前後から1万2000円台まで上昇する場面もあった。日本の効率化された承認システムが、商業的利益につながるという期待を反映している。

シティグループ証券の山口秀丸アナリストは17日付の英文リポートで、報道以降の住友ファーマの株価について「行き過ぎ」だと指摘。ピーク時の年間売上高が1000億円に達し、株価売上高倍率(PSR)4倍で事業価値を評価した場合、評価額は4000億円となる。このうち同社持ち分は約1200億円、1株当たり約300円に相当すると見ていた。

iPS細胞は京都大学の山中伸弥教授が12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した技術。日本政府は同技術を成長戦略の柱の1つに据え、1000億円超の研究費を提供してきた。13年には再生医療関連法を整備し、細胞製品の承認審査を迅速化する枠組みを構築。有効性が推定され、安全性が確認された段階で条件・期限付き承認を可能とする制度を導入した。

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