(ブルームバーグ):人工知能(AI)が初級職人材の需要を圧迫するとの懸念が広がる中でも、米IBMは2026年に米国での初級職採用を3倍に増やす方針だ。
IBMのニッケル・ラモロー最高人事責任者(CHRO)は今週ニューヨークで開かれた会議で、AIが担えると言われているあらゆる職種で初級職採用を増やすと語った。具体的な採用人数は明らかにしなかったが、「全社的」に採用を拡大し、幅広い部門を対象とする。
同氏は、採用増に関して社内の理解を得るため、ソフトウエア開発者など初級職の職務内容の定義を全面的に見直したと述べた。
メディア・調査会社チャーター主催のAI経営戦略関連会議でラモロー氏は、「2、3年前に存在した初級職の職務の大半はAIでこなせる」とし、「そのため、採用拡大への投資が必要だと部門責任者を説得するには、こうした人材がもたらす実際の価値を示さなければならない。それは従来とはまったく異なる職務を通じてでなければならない」と説明した。
その結果、IBMでは若手社員の職務内容が変化している。AIツールが定型的なコーディング作業の大半を処理できるため、若手ソフトウエア開発者は従来よりコーディングに割く時間を減らし、顧客対応により多くの時間を充てている。人事部門の初級職社員は、全ての問い合わせに自ら対応するのではなく、人事チャットボットでは対応できないケースに介入して回答を修正したり、必要に応じて管理職と調整したりする業務を担うようになった。
IBMの決定は、AIによって新卒者の雇用機会が失われるのではないかとの懸念が高まる中で打ち出された。昨年にはアンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)が、AIによって2030年までに初級のオフィス職の半分がなくなる可能性があると警告した。AIモデルの最近の進展も、厳しい雇用環境の中でAIに職を奪われることを懸念する大学生の不安をあおっている。
ラモロー氏は、短期的には初級職の採用削減でコストが抑えられる可能性があるものの、将来的に中堅管理職の不足を招くリスクがあると指摘。その場合、企業は競合他社から人材を引き抜かざるを得なくなり、社内昇進よりもコストがかかる傾向があるとした。さらに、外部採用者は社内で育成された人材よりも企業文化やシステムへの適応に時間を要すると述べた。
一部の経営幹部や経済学者は、技術変革期にある企業にとって若年層の労働者はより有望な投資だと主張する。
ファイル共有サービスを手がける米ドロップボックスのメラニー・ローゼンワッサー人事責任者は若年層について、「AIの活用に関して言えば、彼らはツール・ド・フランスで自転車に乗っているようなもので、私たちの多くはまだ補助輪付きだ」と指摘した。
同氏によると、ドロップボックスは若年層のAI活用能力を取り込むため、インターンシップと新卒向けプログラムを25%拡大している。
原題:IBM to Triple Entry-Level US Hiring With Roles Recast for AI Era(抜粋)
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