物価変動を反映させた実質賃金は昨年12月に減少し、12カ月連続でマイナス圏にとどまった。物価高に賃金の上昇が追いつかない状況が続く中、衆院選で勝利した高市早苗首相の積極財政路線を後押ししそうだ。

厚生労働省が9日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数(CPI)で算出した実質賃金は昨年12月に前年同月比0.1%減だった。市場予想では0.8%増のプラス転換が見込まれていた。2025年の実質賃金は前年比1.3%減で4年連続減少。マイナス幅は前年(0.3%減)から拡大した。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は昨年12月に2.4%増と、前月から伸びが加速。基本給に相当する所定内給与は2.2%増と、前月を上回った。賞与など特別に支払われた給与は2.6%増だった。

実質賃金の減少は物価高が家計を圧迫している状況を示している。8日投開票の衆院選では、物価高対策として各党が消費税減税を競った。自民党は2年限定の飲食料品消費税ゼロの検討を加速すると公約。高市首相は26年度内に実現したいとの考えを示していたが、今回の結果を受けて早期実現を求める声が強まる可能性がある。

東京駅前の出勤風景

高市首相は先月19日の記者会見で、衆院を解散して総選挙を行うことを表明。「強い経済」の実現に向けて、手取りを増やし、実質賃金の上昇を確実なものとし、改善された消費マインドが経済の好循環をけん引する姿が必要だと語った。

8日投開票の衆院選は、自民党が単独で定数465議席の3分の2に当たる310議席を上回る議席を獲得したとNHKや朝日新聞など国内主要メディアが報じた。衆院選の圧勝で高市首相の政権基盤は強まる。

26年春闘に向けては、政労使いずれも生活向上を実感できる実質賃金の増加の重要性に言及。連合は3年連続「5%以上」の賃上げ目標を掲げるとともに、実質賃金を1%上昇軌道に乗せ、これからの「賃上げノルム(社会通念)」としていくことの必要性を強調している。

日本銀行は昨年12月、賃金と物価の緩やかな上昇が続く可能性が高いとの見通しを踏まえ、政策金利を0.75%程度に引き上げた。経済・物価が見通し通り推移すれば利上げを継続する方針だ。

日銀の植田和男総裁は1月、追加利上げのポイントに関して、物価と賃金の上昇がどのようなペースで続くかを多様な指標から判断していく時期だと思うと指摘。4月は相対的に価格改定の頻度が高い月だとし、「そこにある程度の関心を持っていることは事実」と語った。

他のポイント

  • 一般労働者(パートタイム労働者以外)の所定内給与は2.5%増-前月2.4%増
  • エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けにくい共通事業所ベースでは、名目賃金は2.0%増-前月1.1%増
    • 所定内給与は、全体、一般労働者ともに2.1%増
  • 12月の実質賃金の算出に使用されるCPIは、総合が2.1%上昇、持ち家の帰属家賃を除くCPIは2.4%上昇
    • CPI総合ベースの実質賃金は0.3%増-5カ月ぶりプラス
  • 25年の実質賃金は総合ベースで0.8%減-2年ぶりマイナス

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