(ブルームバーグ):トランプ米大統領は27日、このところのドル安を懸念していない考えを示唆した。アイオワ州で記者団の質問に答えた。これを受けて、ドルの指数は一段と低下し、一時2022年初め以来の低水準を付けた。
ドルが約4年ぶりの安値水準に下落たことを懸念しているかとの質問に対し、「いいや、素晴らしいと思う」とトランプ氏は発言。「ドルの価値を見て見れば、われわれがどれだけビジネスをしているかを見れば分かる。ドルは好調だ」と話した。
さらに、「私はただ、公正なこととして、自然な水準を見いだしてほしいだけだ」と語った。

ドルは、トランプ氏が昨年、広範な国・地域に対する関税措置を打ち出して市場の混乱を招き、米政権の二転三転する政策を嫌気し、米国外の投資家が同国から資金を引き揚げるのではないかとの懸念が広がって以降、最も急激な下落を記録していた。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は、トランプ氏の発言直後にこの日の安値を付けた。他の主要通貨に対して軒並み下落し、同指数は一時1.2%安となった。アジア時間28日の取引では幾分、安定しつつある。
ドル安は他の通貨を押し上げる要因にもなっており、円も持ち直している。大統領の発言を受け、円は対ドルで一時1.35%高の1ドル=152円10銭と、昨年10月以来の高値を付けた。また、ユーロは対ドルで一時1.3%上昇し、1ユーロ=1.2081ドルと、21年6月以来の高値となった。
このほか金相場も上昇し、過去最高値を更新した。いわゆる「ディベースメント取引(通貨価値下落に備えた売買)」だ。
米国資産から一段と広範に資金を移すローテーションの動きが勢いを増す中で、投資家は新興国ファンドなどの資産にも過去最高ペースで資金を投じている。こうした動きは、一部で「静かな撤退」とも呼ばれている。
大統領は長年、他国が輸出を促進するために自国通貨押し下げを目指していると非難してきた。また、ベッセント米財務長官は、ドル相場と基軸通貨としてのドルの価値は別物だと強調している。
トランプ氏の発言は、政権が輸出拡大を後押しするためにドル安を肯定的に捉えている姿勢を示唆したものとして、ドル売りのゴーサインをトレーダーに与えたと市場では受け止められている。
「計算されたリスク」
バンク・オブ・ナッソー1982のチーフエコノミスト、ウィン・シン氏は、トランプ氏が「さらなる売りの波を招いた」とし、これが一段のドル安の引き金になるとの見方を示した。
「トランプ政権の閣僚の多くは、輸出競争力を高めるためにドル安を望んでいる」とシン氏は述べた上で、米政権は「計算されたリスクを取っている。通貨安は事態が無秩序になるまでは好ましい」と指摘した。

ドル下落の一因には、先週末以降の円相場の急激な反発がある。市場では、日本政府・日本銀行が円を下支えするために外国為替市場への介入に踏み切る可能性を警戒する動きが広がっていた。
一方でドル安は、予測不能な米政権の政策運営によってもあおられている。トランプ氏がデンマーク自治領グリーンランド領有を示唆するなどの発言を行ったことも含め、一連の動きは同盟国や投資家を動揺させている。
トランプ氏による米連邦準備制度への圧力、減税に伴う米財政見通し悪化や膨張する連邦債務残高への懸念、米国の政治的分極を深める手法も投資家心理を損なっている。
最近のドル安は、米国債利回りが上昇していることや、連邦公開市場委員会(FOMC)が28日の会合で利下げの一時停止を決めるとの見方が広がっているにもかかわらず生じている。いずれも通常であれば通貨を支える要因と受け止められるものだ。
他方、トランプ政権にとって、ドル安は必ずしも不都合ではない可能性がある。ドル安は米製品輸出の競争力を高め、貿易赤字の縮小につながる可能性があるためだ。このほかトランプ氏は、連邦準備制度が政策金利を大幅に引き下げるべきだとの考えを繰り返し示しており、実現すればドルに一段の下押し圧力がかかることになる。
日中に言及
トランプ氏は長年にわたり、ドルを巡って相反する見解を示してきた。2国間交渉で優位性を保つ手段としてドルの強さを誇示する一方、製造業にとってはドル安の利点を強調してきた。昨年には「私は強いドルを好むが、弱いドルの方がはるかに多くの金を稼げる」と語った経緯がある。
トランプ氏の2期目就任以降、ブルームバーグのドル指数は約10%下落しており、トレーダーは一段の下落に備えている。
ドル安で利益が出る短期オプションのプレミアムは、ブルームバーグがデータの集計を開始した11年以降で最高水準に達した。他の通貨に対する強気の期待も数カ月ぶりの高水準となり、昨年4月の米関税措置発表直後に見られた水準近くか、同程度に達している。
取引高も高水準で推移している。26日には、米証券保管振替機関(DTCC)を通じた取引高が25年4月3日に次ぐ過去2番目の高水準を記録した。
こうした中でトランプ氏は27日、ドルの強さを操作することも可能だと示唆。「ヨーヨーのように上げたり下げたりできる」と述べた。ただし、そうしたことは好ましくない結果を招くとし、雇用統計を良く見せるために不要な労働者を雇うことになぞらえた上で、通貨切り下げを図ってきたとして、日本や中国などアジア諸国を批判した。
「中国や日本を見てほしい。彼らは常に円を切り下げたがっていたため、私はかつて徹底的に闘った。分かるだろう、円と人民元だ。彼らはいつも切り下げたがっていた。切り下げ、切り下げ、切り下げだ」と語った。
その上で「私は、不公平だ、切り下げるなと言った。彼らが切り下げれば競争するのが難しくなるからだ。だが彼らはいつも、いやドルは素晴らしいと言って反論してきた」と話した。
ブルームバーグのマクロストラテジスト、タチアナ・ダリー氏は「金利差が多くの通貨に対してドルに引き続き有利に働いている点を踏まえると、きょうのドルの動きは行き過ぎに見えるかもしれない」と指摘。それでもトランプ氏の発言は、今後もドル下落を招く「根強いリスク」を浮き彫りにしており、「投資家に別の逃避先を模索するよう促すものだ」との見解を示した。
原題:Trump Deepens Dollar Woes, Saying He’s Not Concerned About Slump、Trump Says He’s Not Concerned With Decline of US Dollar、Trump Isn’t Concerned About Decline in Dollar(抜粋)
(ベッセント財務長官の過去の発言などを追加して更新します)
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