(ブルームバーグ):中国株式市場の投資家は長年、見えない下支えに安心感を抱いてきた。「国家隊」と称される政府系ファンド(SWF)が、巨額の資金力を駆使して下落時の売りを和らげ、価格を安定させてきたためだ。
その筋書きが先週、反転した。
SWFの中央匯金投資が保有する上場投資信託(ETF)から過去最大の資金流出が起き、中国政府が単に市場を下支えるだけではなく、上昇にも歯止めをかけていることが鮮明になった。下落時に買い支えるというこれまでのやり方からの大きな転換だ。
今回の売却は、市場全体を冷やすというより、テクノロジー分野の一角で高まった投機的な過熱を落ち着かせる狙いとの見方が多い。
それでも、買い支え一辺倒から双方向の取引へと転じたことは、国家隊の行動の変化だ。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の推計によると、中央匯金は22日までの6営業日に14本のETFを合計675億ドル(約10兆4000億円)売却した。
ダンテ・リサーチ創業者のチェン・ダは「十分な数の人がこのプレーヤーの動きを注視していれば、その行動だけで投資家の期待を変えてしまう可能性がある」と述べた。

ETFからの資金流出と時を同じくして、当局は信用取引への規制強化を進めている。収益性が不透明なロケットや人工知能(AI)応用などの分野で急騰が続いていることへの警戒感が背景にある。
広範な本土市場の代表指数であるCSI300は過去1カ月で1.8%上昇した一方、上海証券取引所「科創板(STAR)」市場のSTAR50指数は16%急伸している。同指数は半導体比率が高い。
北京誠盛投資管理のファンドマネジャー、吳畏氏は「今は国家隊の保有が少ない銘柄に取引の軸足を置くのが賢明だろう。巻き添えを避けるためだ」と述べた。「これは結論として強気のシグナルではないので、少し取引のペースを落としている」と語った。
国家隊の取引活動はETFの四半期報告が出るまで明らかにならないが、投資家やアナリストはどれほどの売却余地が残っているのかを推計するのに躍起だ。BIによると、中央匯金は2023年に中国のETFへの積極投資を開始し、25年8月末時点で1800億ドル相当を保有していた。
BIのレベッカ・シン氏らアナリストはリポートで「清算の規模は、過熱したセクターで価格調整を促すための能動的な取り組みを示唆している」と分析。STAR50指数に連動するファンドから記録的な資金流出が起きた後、中央匯金の保有分のうち5%が残っていると推計している。
最近には、指数に連動するETFで売買高が急増するのと同時に指数の日中の上昇が抑え込まれたことが複数回あった。国家隊が売却している兆候と広く受け止められている。
売却は一部の投資家を驚かせたが、多くは緩やかな強気相場を育てるための一歩と受け止めている。CSI300の短期的なボラティリティーは5月以来の低水準に低下した。本土市場の売買代金も、今月初めに約4兆元(約88兆6000億円)に達した熱狂的な水準から落ち着いた。
上海酷望投資管理のファンドマネジャー、楊如意氏は「政府系ファンドの売りを、上昇相場の終わりを示すシグナルとして読むのではなく、構造的で緩やかな強気相場という文脈で考えるべきだ」と述べ、中央匯金が他のテーマ型ETFへ資金を振り向け直すのは理にかなっていると付け加えた。
原題:China National Team’s $68 Billion Exit Alters Stock Strategies(抜粋)
--取材協力:Jack Wang.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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