横領された額は1.8兆円 ベトナムのGDPの約11%

2011年までに、ランはベトナムで知らぬ者のいない実業家としての地位を確立していました。

しかし、彼女の野望は不動産開発に留まりませんでした。彼女が次に手を伸ばしたのは「金融」です。

ランは経営難に陥っていた3つの銀行を合併させ、サイゴン商業銀行(SCB)を誕生させるプロセスを主導しました。

ベトナムの法律では、個人の銀行株保有は5%以下に制限されています。

しかし、検察の調べによれば、ランは多数の知人やダミー会社名義を使い、実質的にSCB株の90%以上を支配していました。

判決によれば、彼女はこの「私物化した銀行」を自身の金庫代わりとして利用していました。

1000社以上の幽霊会社ネットワークを構築し、架空のプロジェクトを立てて、SCBから巨額の融資を引き出しました。

そして、その資金は幽霊会社の口座に送金されるか、あるいは直接「現金」として回収されました。

この手法で引き出された資金の総額は約430億ドルにのぼり、そのうち横領と認定された額だけでも120億ドル(日本円で約1.8兆円)を超えます。

これは2022年のベトナムのGDPの約11%に相当する驚異的な数字です。

一つの経済圏を揺るがすほどの資金が、一人の女性の手に渡っていたのです。