「燃える炉」運動:グエン・フー・チョン書記長の決断

なぜ、これほどの巨悪が長年放置されていたのでしょうか。

その背景には、急速な経済成長の影で蔓延した「汚職の文化」があります。

ベトナムでは過去10年間で富裕層がほぼ倍増しましたが、その富の蓄積プロセスは不透明なものが多く、政府高官と実業家の癒着が常態化していました。

この状況に危機感を抱いたのが、ベトナム共産党のトップ、故グエン・フー・チョン書記長でした。

チョン氏は、反汚職運動を「燃える炉」と名付けました。

「火が起これば、湿った薪も燃え上がる」――つまり、関与した者は地位や権力に関わらず、等しく裁かれるという意味です。

2016年の再選後、この運動は加速しました。

ランの逮捕はその象徴でした。

2022年10月、ランが社債詐欺の容疑で逮捕された夜、ベトナム市場には激震が走りました。

SCBの窓口には預金を引き出そうとする人々が殺到し、金融株は暴落。

市場が鎮静化するまでに1週間を要するほどのパニックとなりました。