(ブルームバーグ):米バージニア州北部で文具店を営むサラ・バージオ氏は年末商戦で売り上げが一時的に増加する昨年のクリスマスごろ、不可解な新規顧客に気づいた。アマゾン・ドット・コムに関連する匿名のメールアドレスから、注文が相次いでいた。
アマゾンのサイトで商品は販売していないため、同社がバージオ氏の商品情報を複製し、サイト利用者に代わって購入していることをすぐに突き止めた。メールアドレスは意味不明な文字列の後、「buyforme.amazon」となっていた。
「正直なところ、あまり心配はしていなかった。顧客を獲得できていたからだ」とバージオ氏は振り返った。
だがその後、苦情が入り始めた。アマゾンが掲載した商品リストは実験的な人工知能(AI)ツールによって自動生成され、バージオ氏が在庫で持つ商品と必ずしも一致していなかった。ある購入者はソフトボール大のストレス解消ボールが届くと思っていたが、バージオ氏の店舗「ヒッチコック・ペーパー」では取り扱いがなく、実際に届いたのは同店舗で販売する少し小さめのボールだった。
「クリスマスの贈り物やホリデーギフトを注文した人たちが違う商品を受け取り、返金を求めてきた」とバージオ氏はインタビューで語った。「われわれのような個人商店ではなく、アマゾンがやっていることだと説明しなければならなかった。われわれは注文通りに商品を発送しただけだ」。
SNSで注意喚起
こうしてクリスマスから年末年始にかけて、自社の商品がアマゾンに掲載されていることに気づいた小規模店舗のオーナーや職人たちは、SNS上で情報交換や同業者への注意喚起を行った。カリフォルニア州にあるボボ・デザイン・スタジオのアンジー・チュア氏は、自身の体験に基づく動画をインスタグラムに投稿した。
インタビューに応じた小規模店舗の店主6人は、アマゾンのサイトで知らないうちに製品が販売されていたと述べた。アマゾンを敬遠していた一部の店主らは、事前に同意を求められるべきだったと指摘した。
問題の自動生成リストの目的は、他の小売業者が取り扱う商品をアマゾンの利用者が購入できるようにすることだ。
独立系の販売業者に本来なら得られなかった売り上げをもたらす可能性がある一方、顧客との関係を誰が管理するのか、問題発生時の責任を誰が負うのかという疑問が生じる。一部の小売業者は、商品画像が間違って表示されたり、卸売価格の誤表示があったりしたと指摘する。
大量の注文
ニューメキシコ州サンタフェのジュエリー作家、カーラ・ハックマン氏は、アーティスト向けのSNSグループで警告を見た後、自身の作品数点がアマゾンのサイトに掲載されていることに気づいた。土曜日に掲載取り下げを求め、翌週の火曜日までに商品は削除された。
「私は一人で切り盛りしている。突然100件もの注文が入ったら、対応しきれないかもしれない。著作物を勝手に扱うなら、事前に相談があるべきだ。これは私のビジネスであり、彼らのビジネスではない」と強調した。
アマゾンの広報担当マキシン・タガイ氏は発表文で、販売業者は自由に掲載を拒否できると指摘した。
他の小売りサイトにリンクして購入を促す「Shop Direct(ショップ・ダイレクト)」と、商品情報を転載しアマゾン上で購入手続きを完結させる「Buy For Me(バイ・フォー・ミー)」の2つの取り組みについて同氏は、「現在アマゾンで扱っていないブランドや商品を顧客が見つけられるようにし、企業の新規顧客獲得と売り上げの上積みを後押しする試験的なプログラムだ。これらプログラムには好意的な反応が寄せられている」と説明した。
タガイ氏は、販売業者が通知を受けずに登録された理由には言及しなかった。Buy For Meの対象商品が、4月の開始時の約6万5000点から50万点以上に増えたと指摘した。
無断掲載を調査
ボボ・デザイン・スタジオのチュア氏はサポート窓口(branddirect@amazon.com)にメールを送り、その後、商品はアマゾンから削除されたが、自身はアマゾンで販売するつもりは全くなかったと語った。
「自分の商品をアマゾンで売りたくないだけだ。自分たちで作り、自分たちで仕入れている。われわれが身を置きたい場所ではない。例えるなら、エアビーアンドビーが突然現れ、許可なくあなたの家を賃貸市場に出すようなものだ」と話した。
チュア氏によると、知的財産権専門の弁護士から連絡があった。また、アマゾンによる無断掲載がどの程度広がっているかを把握するため自ら作成した調査フォームに6日正午時点で、他の187業者が回答を寄せたという。
調査に参加した一人に、ソルトレークシティーを拠点とする小売店「モチ・キッズ」の創業者、アマンダ・スチュワート氏がいる。彼女も掲載リストが商品写真の著作権を侵害したり、自身の仕入れ先との契約に違反したりするリスクを懸念している。仕入れ先の多くは独立系ブランドで、アマゾンでの再販を禁止しているからだ。
前例なし
アマゾンは以前から、独立系の販売業者を自社サイトに誘致してきた。現在ではアマゾンでの売り上げ全体の約6割をこうした業者が占めている。これら業者は同社との取引を自ら望み、商品掲載リストを直接管理し、売り上げに応じた手数料をアマゾンに支払っている。
アマゾンの市場動向に詳しい独立系アナリストのヨザス・カジウケナス氏によれば、場合によっては知らない間に業者がアマゾンに登録されているという事態には、前例がない。
「アマゾンはますます攻撃的になり、参加を表明していないブランドの取り込みを始めたようだ」とし、「手当たり次第に複数の電子商取引サイトを巻き込んだ。手法としてはあまりに乱暴だ」とインタビューで語った。
原題:Amazon AI Tool Offers Merchants’ Products Without Their Consent(抜粋)
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