中国は、軍事転用の可能性があるとする品目について日本への輸出を禁止すると発表した。レアアース(希土類)のうち中・重希土類の一部について、日本向け輸出許可審査を厳格化する方向で検討しているとの報道もある。自動車や風力発電の部材などに使われるレアアースは、企業も調達の多様化を図ってきたが依然として7割が中国からの輸入と依存度が高い。

レアアースは、大きくネオジムなど「軽希土類」とジスプロシウムなど「中・重希土類」に分けられる。中・重希土類は電気自動車(EV)をはじめ、レーザー機器や航空機部品にも使われ、安全保障の観点からも重要な物質だ。

エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、中国はレアアースの埋蔵量と生産量で世界首位であるほか、精錬量のシェアは9割を超える。日本が2024年に輸入したレアアース8品目の7割超が中国からだった。

経済産業省の資料によると09年時点での中国依存度は85%で、10年の中国による輸出制限を経て、軽希土類の調達多角化は比較的進んだ。ただ中・重希土類は依然として中国に頼る状況が続いている。

 

レアアースを扱う三菱商事は規制の内容を注視し、影響を精査していくとした。丸紅も新規制の影響や対応について「精査中」としている。住友商事は、中国政府の発表は認識しており「状況を注視する」という。一方、ソニーグループは軍事用途が規制対象ということで影響はないとしている。

直ちに影響が顕在化するかは不透明なものの、過去には生産活動に影を落とした。中国がレアアースの輸出に関する新たな承認手続きを導入した25年夏ごろには、米フォード・モーターが部材の不足を理由に一部車両の生産を1週間停止。スズキも同様の原因で小型車スイフトの生産を停止する事態になったと、同年6月に報じられていた。

東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは、規制が強化されれば自動車産業の生産はリスクを抱え「銘柄によっては工場の生産がとまるリスクが出てくる可能性がある」と指摘。

重希土類の1種であるテルビウム酸化物(ドイツ)

岩井コスモ証券アナリストの斎藤和嘉氏は、10年の「レアアース・ショック」後に「在庫を年単位で持つようになった」企業が増えたといい、短期的な影響は軽微とみる。一方でEVモーターなどに少量使われ、高温での性能維持に役立つイットリウムについては「中国が事実上独占状態にある」ことは気がかりだとした。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは昨年11月末のコラムで、レアアース輸出規制が3カ月続いた場合の経済損失は6600億円で、国内総生産(GDP)を0.11%押し下げると試算した。村田製作所は生産に影響が生じないよう努めていくとしている。

脱中国はそう簡単ではなさそうだ。レアアースを使う永久磁石は幅広い製品に不可欠で仮に他国からの調達を増やそうとしても、他国もレアアース調達で中国に依存している可能性が高い。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)アナリストの北浦岳志氏は、他国からの磁石の調達は、短期的な供給障害への対応策となり得るが、長期的な解決策にはならないと述べた。

レアアース自体を使わない取り組みも現れ始めている。ミネベアミツミは昨秋、スマホ用カメラなどに使われる小型アクシュエーター(駆動装置)でレアアースを使わないモデルを開発した。自動車部品メーカーのアステモはレアアースを使わない電気自動車向けに新型モーターを開発した。

(第5段落にソニーグループのコメントを追加しました)

--取材協力:堤健太郎、長谷部結衣.

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