(ブルームバーグ):トランプ米大統領は6日、ベネズエラが米国に最大5000万バレルの原油を引き渡すと表明した。現在の市場価格で換算すると、約28億ドル(約4400億円)相当になる。売却代金は両国の利益になるとも宣言した。
今回の発表では、詳細がほとんど明かされなかったものの、マドゥロ大統領を拘束後、ベネズエラなどで経済的な影響力を拡大しようとする米政府にとって重要な一歩となる。一方、ベネズエラ産原油の最大の買い手であり、緊密なパートナーだった中国にとっては打撃だ。
「ベネズエラの暫定当局が3000万-5000万バレルの高品質な制裁対象の石油を米国に引き渡すと発表でき、うれしく思う」とトランプ氏はSNSに投稿した。
「この石油は市場価格で売却され、その資金はベネズエラと米国の国民の利益のために使われるよう、米大統領である私が管理する!」と付け加えた。
トランプ氏が言及した数量は、米による部分封鎖前のベネズエラ原油生産の約30-50日分に相当する。米原油指標であるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)はアジア時間7日、一時2.4%下落した。現在は1バレル=56.40ドル近くで推移している。
米エネルギー省とホワイトハウスの担当者は詳細に関する問い合わせに返答しなかった。ベネズエラの通信情報省と石油省もコメント要請に応じていない。
経済的には小さい
ベネズエラは世界最大の確認原油埋蔵量を誇るが、数十年にわたる放置や多くの外資系石油会社の撤退により、生産量が急減している。現在、同国が世界の供給に占める割合は1%未満にとどまっている。アナリストらは、生産を大幅に回復させるには数年と数十億ドルの投資が必要になると指摘する。
米による封鎖が先月始まって以降、ベネズエラには貯蔵タンクや契約船舶に積み上がっている未出荷の石油のバックログ(滞留分)がある。海事情報会社ケプラーによると、封鎖が長引く中、国営ベネズエラ石油(PDVSA)は急速に貯蔵スペースを使い果たしつつある。
一方、シェブロンは米制裁の適用除外措置でベネズエラから石油の生産・輸出を行っている唯一の米企業となっている。同社は、政府管理下のホセ港やバホ・グランデ港に向かう少なくとも11隻のフリートを予約している。
シェブロンの担当者にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。
カロバー・キャピタルのハリス・クルシド最高投資責任者(CIO)は「上限で見ても、3000万-5000万バレルというのは政治的には大きく聞こえるが、経済的には小さい」と分析。「これは単発的なフローであり、構造的な供給の変化ではない」と話す。

トランプ大統領はSNS投稿で、制裁対象の石油が「貯蔵船によって運ばれ、米国の荷揚げドックに直接持ち込まれる」と説明。ライト米エネルギー長官に対し、この計画を「直ちに」実行するよう指示したと明らかにした。
ベネズエラ産原油は、特に米メキシコ湾岸沿いの製油所に適している。その多くは重質の高硫黄原油を処理するために建設された。フィリップス66やバレロ・エナジーなどが運営するプラントは、出荷から恩恵を受ける可能性がある。マドゥロ氏が拘束された後、週明け5日に両社の株価は急騰した。
政治的な方向転換
一方、米ABCは6日、トランプ政権がベネズエラのロドリゲス暫定大統領に対し、石油生産で米と独占的に提携し、重質原油を販売する際には米を優先する必要があると伝えたと報じた。
ABCが事情に詳しい匿名関係者3人を引用して報じたところでは、米は中国とロシア、イラン、キューバとの経済関係を縮小するようベネズエラに求めている。実現すれば、ここ何年にもわたり経済と安全保障の安定で4カ国に大きく依存してきたベネズエラにとって、政治的な方向転換を意味することになる。
マドゥロ大統領が米国に拘束されるまで、中国は大幅に割引されたベネズエラ産原油の主な受益者だった。その取引の大部分はアジアにあるカーゴを除いて停止しており、中国政府はイラクやカナダ産原油など他の選択肢を模索する必要に迫られる可能性がある。
ベネズエラ政府への生命線を断つための米政府の取り組みは数週間続いており、米軍はタンカーを標的としている。米は大西洋に向かう「ベラ1号」を追跡している。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、ロシアは同船を護衛するために潜水艦などを派遣した。
原題:Trump Says Venezuela to Send Oil Worth Up to $2.8 Billion to US(抜粋)
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