2025年は、既存の秩序が必ずしも維持されないことが浮き彫りとなった。実現性が低いとみられていた事象が相次ぎ現実化した年だった。

こうした背景を踏まえ、26年に注視すべき12の「ワイルドカード(不確定要素)」を提示する。これらは予測ではなく、蓋然(がいぜん)性は低いものの発生すれば大きな影響を及ぼし得るとライターやアナリストらが指摘した注目すべきシナリオだ。

中国が人工知能(AI)で米国を凌駕

中国のAIモデルは、恐らく26年末までに主要指標で米国勢と肩を並べ、主導権を握るまでの道筋を付ける可能性がある。DeepSeekなどは、力任せのスケーリングではなくアーキテクチャの刷新により、最先端に近い性能を確保できることを証明した。スケーリングから得られる利益逓減や能力の伸び以上にトレーニングコストが増えている米国に対し、中国は貿易休戦で半導体の調達が改善すれば、次世代のパラダイムシフトを主導する蓋然性が高まる-マイケル・デン(ブルームバーグ・ジオエコノミクス)

英国で新首相誕生

有権者の政治不信が根強い中、英国は政治的混迷から抜け出せずにいる。24年の勝利後、スターマー首相の支持率低迷が与党内の不安をかき立て、後継を狙う動きが表面化している。米国の中間選挙に相当する5月の地方選挙の結果次第では、求心力を失った首相への退陣圧力が一気に高まる見通しだ-エレン・ミリガン(ブルームバーグ・ニュース)

トランプ米大統領の関税再考

米国は25年、1930年以来となる大規模な関税導入という「経済実験」に踏み切った。関税による悪影響はすでに顕在化し、世論の反発も強い。トランプ氏は少なくとも一部の関税を維持しつつも、中間選挙を控え生活費上昇を懸念する有権者に配慮し、26年には貿易戦争の「勝利」を宣言して矛を収める可能性がある-ショーン・ドナン(エコノミクス担当シニアライター)

矛先がベネズエラからキューバへ

ベネズエラのマドゥロ大統領拘束を受け、米国の圧力が向かう先がキューバに転じるかもしれない。マドゥロ氏不在なら、ベネズエラ産原油の転売に依存するキューバ経済はエネルギー供給と外貨獲得手段を同時に失う窮地に陥る。マドゥロ氏排除で勢いづくトランプ政権が、軍事的圧力を強める公算も大きい-クリス・ケネディ(ブルームバーグ・ジオエコノミクス)

地域型カーシェアの加速

公共交通への投資継続と柔軟な在宅勤務維持により、大都市圏での自家用車保有の意義が低下している。企業運営型ではなく、近隣住民同士がプラットフォームを介して車両を共有する、低コストで非公式な地域型カーシェアが普及する余地が生じている-ジャッキー・ビショフ(ブルームバーグ・アイデア&カルチャー)

パラマウントの売却

パラマウント・スカイダンスの経営権を8月に掌握したデービッド・エリソン最高経営責任者(CEO)は、米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)買収に失敗すれば、配信事業での規模不足を痛感することになる。巨額の損失を覚悟の上で、パラマウントの売却に踏み切る可能性が浮上している-フェリックス・サーモン(ブルームバーグ・パースーツ)

ストリーミングの整理・解約

ネットフリックスやスポティファイは、相次ぐ値上げにより顧客の忍耐は限界に達しつつある。英国では両社の最上位プランが月額20ポンド(約4200円)を超えている。26年は、かつてのケーブルテレビ解約と同様に、ストリーミングサービスを整理・解約する動きが新たな潮流となる恐れがある-アダム・ブレンフォード(ブルームバーグ・ウィークエンド)

ワインが指標に

ワインが世界の社会的・経済的指標となっている。ワインバーは時代遅れとの認識があったが、ロンドンでの相次ぐ新規出店に加え、インドでのワイン消費の急増、サウジアラビアでの酒類販売規制の緩和など、これまでの常識を覆す変化が表れ始めている-ミシャル・フセイン(ザ・ミシャル・フセイン・ショー)

フードホールの衰退

2010年代に都市再生の象徴だったフードホールが曲がり角を迎えている。賃料の高騰とコスト増を背景にニューヨーク市では閉鎖が相次いでいる。26年にはこの波が他の主要都市にも波及するかもしれない-デービッド・ダドリー(ブルームバーグ・シティーラボ)

AIによるパフォーマンス管理の混乱

企業はAI投資の効果を示すため、従業員のAI活用度を人事評価に反映させ始めている。一方で、従業員が上司との交渉や厄介な同僚への対応、パフォーマンス評価プロセスにAIを駆使することを巡り懸念も浮上している。AIと人事管理の融合は早々に混乱を招きかねない-ジャッキー・ビショフ(ブルームバーグ・アイデア&カルチャー)

イーロン・マスク氏の中間選挙支援

26年の米中間選挙に先立ち、マスク氏による共和党への資金支援がすでに行われていると報じられている。戦略面にどこまで関与するのか。マスク氏の企業群や政府効率化省(DOGE)にとって何を意味するのか。考えられるシナリオはさまざまだ-カート・ワグナー(ブルームバーグ・テック)

著作権問題とAIバブルの崩壊

著作権問題がAIブームの命運を握るかもしれない。米国の裁判所はこれまでデータ利用が合法的ならおおむね問題ないとしてきたが、ニューヨーク・タイムズ対OpenAIなどの係争案件は予断を許さない。学習プロセスの違法性が認定されれば、AI産業の成長が妨げられ、AIバブルが崩壊するリスクをはらんでいる-ウォルター・フリック(ブルームバーグ・ウィークエンド)

原題:12 Wildcard Possibilities for 2026: The Forecast(抜粋)

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