イランのペゼシュキアン大統領は、予定されていた増税の見直しを約束した上で、デモ参加者の「要求は正当だ」と述べ、抗議活動の沈静化を図った。

29日には首都テヘランにある大規模市場グランド・バザールや周辺の商業地域で数百人が抗議活動を行った。ペゼシュキアン氏はX(旧ツイッター)への投稿で「国民の購買力を維持することが優先課題だ」と表明。政府は「問題解決に向けて最大限の対応を取り、責任ある姿勢で臨む」と述べた。

通貨リアルは史上最安値に下落し、食料品価格が高騰している。リアル安は国際社会からの厳しい制裁で困窮している経済をさらに悪化させている。制裁は最近、核開発問題をめぐる行き詰まりによってさらに強化された。

29日、テヘランを含む複数の都市で抗議デモが発生し、SNS上に投稿された映像からは、デモ参加者と治安部隊の間で衝突が起きた様子がうかがえた。準国営紙ハミハンは、複数の逮捕者が出たと報じている。

こうした事態を受け、2019年の燃料価格引き上げや、22年に若い女性が拘束中に死亡した事件を発端とする抗議行動など、近年に同国を揺るがした他の暴動と同様の暴力的な騒乱に発展するとの懸念が高まっている。

30日には市場は幾分落ち着きを取り戻したが、Xへの投稿では、テヘラン大学で学生が治安部隊の前でスローガンを叫ぶ様子も確認された。

ペゼシュキアン大統領は、先週公表した政府予算案の修正に前向きな姿勢を示した。この予算案では、歳入を60%増やす一方、政府職員などの賃上げ幅はインフレ率を下回る水準にとどまっていた。国営イラン通信(IRNA)によれば、同氏は国会議員宛ての書簡で、賃上げ幅の拡大や、中小企業や低所得層に配慮した税制見直し、さらに的を絞った補助金制度の導入を提案した。

同大統領が29日に中央銀行総裁を交代させた後、リアルは非公式市場で1ドル=145万リアルの過去最安値付近から持ち直し、30日午後までに138万リアル前後で安定している。

6月に米国とイスラエルがイランの核施設を攻撃したが、ペゼシュキアン氏は同様の攻撃を繰り返さないよう警告した。「抑圧的な侵略に対するイランの対応は厳しく、後悔を伴うものとなる」と述べた。

これに先立ち、トランプ米大統領は30日、イランが核開発を再開すれば再び攻撃する用意があると警告した。トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相との会談後、イランが核能力の再構築や弾道ミサイル開発の強化を図っているとの懸念を示した。ネタニヤフ首相も同様の主張を繰り返している。

イランは6月の攻撃以降、国際的な核査察官の受け入れを停止しており、核兵器級に近い濃縮ウランの備蓄状況をめぐって国際社会の懸念が高まっている。

原題:Iran’s President Moves to Calm Protests With Vow to Fix Budget(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2025 Bloomberg L.P.