昨年、歴史的な高騰を記録したカカオ価格がここにきて、年間ベースで過去最大の下落に向かっている。しかし、板チョコレートやサンタクロース形のチョコレート菓子の価格がすぐに下がる気配はない。

カカオ先物相場が3倍近くに急騰した昨年、メーカーは原材料高を受けてチョコレート価格を引き上げた。現在も価格のピーク時に調達したカカオ豆を使用しており、配合を見直したレシピを元に戻すのも容易ではない。

生産者やアナリストは、カカオ価格の下落が小売価格に反映されるのは来年下期になると予想しているが、確実とまでは言えない。牛肉やコーヒーなど食料品価格の高騰で家計が圧迫されている世帯にとって、チョコレートが手頃なおやつかどうか今後も見極めが必要になりそうだ。

「チョコレート業界が現在売りさばこうとしている価格の水準は非常に高く、痛みを伴う」と、ロンドンのコモディティーブローカー、マレックス・グループで農産物取引を統括するジョナサン・パークマン氏は指摘。「これを処理するには、相当の時間がかかるだろう」と付け加えた。

 

カカオ価格は昨年、コートジボワールとガーナで病害や異常気象により生産が打撃を受け、1トン当たり約1万3000ドルと過去最高値を記録した。だが今年に入り、収穫見通しの改善や需要の鈍化で価格は下落し、年初来で約50%安と1960年の記録開始以来最大の年間下落率に向かっている。

価格高騰は業界全体に深い爪痕を残した。欧米の大手食品メーカーからチョコレート職人の工房までが、カカオ確保と採算維持に追われ、生き残りを懸けた対応を迫られた。

彼らは小売価格の引き下げには慎重だ。

ドイツの老舗製菓メーカー、ランベルツのオーナー、ヘルマン・ビュールベッカー氏によると、同社が価格高騰期に確保したカカオ在庫は2026年半ばまで持つ見通し。同社に50年在籍する同氏は「これほどの価格急騰は記憶にない」と語った。

アーヘンに拠点を置く家族経営の同社は、クッキーやチョコレートがけのジンジャーブレッドなどを製造する。高値でのカカオ調達により、年間コストは約1億5000万ユーロ(約276億円)増加し、前年売上高の約2割に相当する負担となった。他の多くの企業と同様、ランベルツもコストを消費者に転嫁せざるを得ず、販売量の減少を受け入れねばならなかった。

 

米ギタード・チョコレートのコモディティー担当副社長スコット・アモイ氏は、メーカーは失った収益や利益率を取り戻そうとしており「価格が下がるまでには26年のかなり長い期間を要するだろう」と述べた。

大手メーカーの一部はカカオ市場の変動性を理由に変更には慎重な姿勢を崩していない。「キットカット」を製造するネスレは、最近の価格動向は好材料だが具体的な変更についてコメントするには時期尚早だとした。米ハーシーのスティーブ・ヴォスクイル最高財務責任者(CFO)は、10月の決算説明会である程度の「価格のデフレ傾向」が見られ始めるのは「26年の後半になる」との見通しを示した。

原題:Cocoa Prices Are Plunging. Chocolate Will Take Longer(抜粋)

--取材協力:Fabienne Kinzelmann、Chris Miller.

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