(ブルームバーグ):基本給に相当する所定内給与は10月に今年最大の伸びとなった。好調な春闘の流れが継続しており、日本銀行の金融政策正常化を後押しする。実質賃金はマイナスが続いたものの、減少幅は縮小した。
厚生労働省が8日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、所定内給与は前年同月比2.6%増と、伸び率は昨年12月以来の大きさとなった。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は2.6%増と46カ月連続のプラス。市場予想(2.2%増)を上回った。
厚生労働省は、10月の所定内給与の増加について、春闘の影響が一定程度あるのではないかと指摘。パートタイム比率が前年比で低下し、相対的に賃金の高い一般労働者の割合が増えたことも、全体として上がった一因と考えられるとしている。
日銀の植田和男総裁は高市早苗首相との初会談で、賃金に関し、物価とともに上昇するようなメカニズムが復活してきていると説明。1日の講演では、特に来春闘に向けた初動のモメンタム(勢い)の確認が重要との認識を示した。金融緩和度合いの調整を進める方針の日銀にとって、賃金動向は引き続き重要な判断材料となる。
SMBC日興証券の関口直人エコノミストは、賃金の加速は見えないものの、「基本給で2%程度の上昇は維持できているという意味では悪くはない状態だ」と指摘する。日銀の12月利上げは「確実なのではないか」とみる一方、来年以降は2026年春闘の結果などを踏まえてということになり、「まだ未知数な部分が多い」としている。

複数の関係者によると、日銀は内外の経済・物価や市場に大きな変化がない限り、12月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に引き上げる公算が大きい。ポイントとなる来年の賃上げは、高水準の企業収益が確保される中、労使ともに前向きな姿勢が維持されるなど良好な内容が期待できるという。
連合は2026年春闘の闘争方針で、3年連続「5%以上」の賃上げ目標を掲げた。経営側も、賃上げの力強いモメンタムのさらなる定着を図る考えを示している。高市首相は、11月に開催した政労使会議で、過去2年と遜色ない水準の賃上げ実現へ労使代表に協力を要請した。
実質賃金
物価変動を反映させた実質賃金は10カ月連続で前年を下回ったものの、マイナス幅は前月から縮小した。
「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数(CPI)で算出した実質賃金は、前年同月比0.7%減(前月1.3%減)。CPI総合で算出したベースでは0.4%減(同0.7%減)だった。
連合は26年春闘に向けて、賃上げ目標とともに、実質賃金を「1%上昇軌道」に乗せる方針を示した。「強い経済」の実現を掲げる高市首相は、「物価上昇に負けないベースアップの実現」を重視している。
春闘の結果や物価高などを背景に賃金底上げの動きが続いている。厚生労働省が9月に発表した地域別改定額によると、最低賃金の全国平均は時給1121円で、前年度からの引き上げ額が過去最大の66円となった。これにより最低賃金は初めて全ての都道府県で1000円を超える。10月から来年3月末にかけて順次適用される。
10月のパートタイム労働者の時間当たり給与は前年同月比3.3%増。前月(2.8%増)から伸びが拡大した。
他のポイント
- 一般労働者(パートタイム労働者以外)の所定内給与は2.7%増-昨年12月以来の高い伸び
- エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けにくい共通事業所ベースでは、名目賃金は2.4%増-前月2.5%増
- 所定内給与は、全体で2.3%増、一般労働者で2.2%増
- 実質賃金の算出に用いる消費者物価指数は、持ち家の帰属家賃を除くCPIが3.4%上昇、総合は3.0%上昇
(エコノミストコメントとチャートを追加して更新しました)
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