オーストラリア政府は10日から、TikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)など主要交流サイト(SNS)について16歳未満の利用を禁じる。若者への影響が懸念されるなか、こうした包括的な規制を導入する民主国家は世界で初めて。同様の動きが今後、各国・地域に広がる可能性が高い。

新制度では各プラットフォームに対し、16歳未満がアカウントを保有できないよう措置を講じることが法律で義務付けられる。従わない企業には最大4950万豪ドル(約50億円)の罰金が科される。

有害コンテンツやネットいじめについてソーシャルメディア企業の責任を問おうとする動きは、世界的に強まっている。インドネシア、デンマーク、ブラジルの当局者へのインタビューでは、各国政府がオーストラリアでの導入状況を注意深く見守り、若年層ユーザーを守るための独自の対応を計画していることが分かった。

デンマークのデジタル担当相、キャロライン・ステージ・オルセン氏は「オーストラリアの発表を聞いて、大変うらやましく感じた」と述べ、「極めて重要な一歩だ」と評価した。

世界全体では16歳未満のソーシャルメディア利用者は多くないものの、調査会社eMarketerによると、米国では利用者の約10人に1人が18歳未満となっている。ブラジルのような人口の多い新興国では、18歳未満が利用者のほぼ5人に1人に達する。

利用者数と利用時間は、収入の大部分を広告が占めるソーシャルメディア企業にとって非常に重要だ。10代のアクセスを制限すれば、業界が今年得るとeMarketerが推計する2450億ドル超の収入の一部が危険にさらされる可能性がある。

Photographer: Bloomberg

Facebook(フェイスブック)とInstagramを運営するメタ・プラットフォームズは新法を順守すると約束する一方、禁止措置の実施は難しく、かえって子どもをネットの暗部へと導くリスクがあると主張し、親の管理を強化する方が望ましいと述べている。TikTokを運営する中国のバイトダンス(字節跳動)も法には従うとしつつ、年齢による一律禁止は効果がないと論じている。

それでも、オーストラリアでの制限導入が成功すれば、世界的な動きを後押しする可能性がある。同国は過去にも業界規制の先駆けとなった事例があり、2012年にたばこのプレーン包装(ブランドロゴなどデザイン要素を排した包装)を義務付けた措置には、フランスやカナダを含む数十カ国が追随した。

ニューヨーク大学スターン経営大学院のビジネス・人権センターで所長を務めるマイケル・ポズナー氏は「各国政府には、SNSを規制する適切な手段を見極めなければならないとの切迫感がある」と指摘。「事態は非常に速いペースで進んでいる」と語った。

命綱の側面も 

2024年にオーストラリアで実施された世論調査で、16歳未満のSNS利用を禁じる措置に多くの国民が賛成していることが分かった。しかし一部の団体は、利用禁止が社会的に弱い立場にある若者への支援手段を奪うほか、より危険なプラットフォームに誘導するなど、意図せぬ悪影響をもたらす可能性があると警告している。

アムネスティ・インターナショナルの戦略キャンペーン担当者ニキータ・ホワイト氏は「特にLGBTQA+の若者は、ソーシャルメディアを通じてつながりやコミュニティを得ている」と指摘。「この禁止措置により、そのつながりが奪われてしまう」と続けた。

また、禁止措置では有害コンテンツの発信自体への対策が不十分だとの批判も出ている。

若者のメンタルヘルスを支援する団体「UrVoice Australia」でアンバサダーを務めるパトリック・ジョーンズさん(16)は「問題なのはコンテンツそのものであり、そのコンテンツに対する私たちのアクセスではない」と述べた。

原題:TikTok, Instagram Ban for Australian Kids Heralds Global Curbs(抜粋)

--取材協力:Daniel Carvalho、Anisah Shukry、Kok Leong Chan、Daniel Basteiro、Tracy Withers、Chandra Asmara.

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