(ブルームバーグ):日本銀行は、内外の経済・物価や市場に大きな変化がない限り、今月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に引き上げる公算が大きい。その後も利上げ継続姿勢を維持する見通しだ。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、ポイントとなる来年の賃上げは、高水準の企業収益が確保される中、労使ともに前向きな姿勢が維持されるなど良好な内容が期待できる。最大のリスク要因である米関税政策とそれに伴う米経済の先行き不確実性も低下し、日銀の経済見通しが実現する確度が高まっている。
今回の利上げは緩和的な金融環境の中での調整だとし、利上げ後も実質金利はマイナス圏にあり、金融引き締めではないという。経済・物価が日銀の見通しに沿って推移すれば、利上げで緩和度合いを調整していく姿勢も変わらない見込みで、政策の打ち止め感は出さない見通しだ。
日銀が利上げすれば1月以来となる。現行の0.5%を超える政策金利水準は、新日銀法施行前の1995年以来、30年ぶりの水準だ。市場では、日銀が利上げ後の政策運営についてどのような方針を示すかが注目を集めている。
ブルームバーグの報道後、東京外国為替市場の円相場は対ドルで一時154円80銭まで上昇した。直前は155円05銭前後で推移していた。
植田和男総裁は1日の講演で、18、19日に開く会合で「利上げの是非について適切に判断したい」と発言し、利上げの可能性を示唆した。これを受けて金融市場では今月利上げの織り込みが約9割に達している。
関係者によると、この発言が1月の利上げ前と似た表現であり、市場がどう受け止めるかを日銀は認識していた。会合までに、12月調査の日銀短観や米連邦公開市場委員会(FOMC)、米雇用統計などの重要イベントを控えており、直前までデータや情報、市場動向を見極めて最終判断する。
中立金利
0.75%への引き上げ後は、引き続き利上げを急がなければならない経済・物価情勢にないと日銀はみている。景気を刺激も抑制もしない中立金利について最新の見解を示す可能性があるが、水準を特定するのは難しく、利上げの影響を点検しながら探っていく考えに変化はないという。
日銀が集計した自然利子率の推計に基づけば、中立金利は1-2.5%に分布している。植田総裁は4日の参院財政金融委員会で、中立金利の推計にはかなり広い幅があるとしつつ、狭める作業がうまくいけば「適宜公表していきたい」との考えを示した。会合や総裁会見での情報発信が注目される。
複数の関係者によると、高市早苗政権は、日銀が今月利上げを容認する姿勢だ。ただ、このタイミングでの実施に慎重な意見もあるという。高市首相は金融緩和を重視するとみられており、日銀に利上げペースをより緩やかにするよう影響力を及ぼすのではないかとの観測も浮上していた。
(第5段落に記事送信後の市場の動きを追加して更新しました)
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