予備投票の結果次第では、法案採決を延期する可能性があろう。仮に法案が否決された場合も、すぐに連立解消に発展するリスクは低い。
最近の世論調査では、2月の連邦議会選挙で第二党に躍進した極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が一段と支持を伸ばし、一部調査でCDU・CSUを上回っており、連立を組む二会派がともに支持を失っている。
主要政党はAfDを連立相手から除外しており、二会派・三政党による大連立以外に、議会の過半数を確保可能な連立の組み合わせは見当たらない。
また、長年の緊縮財政、産業構造転換の遅れ、エネルギー価格の高止まりなどを受け、ドイツ経済は構造不況に陥っている。
連立政権は財政収支の均衡化ルール(債務ブレーキ)を見直し、経済の立て直しや競争力の回復を目指すが、その取り組みはようやく始まったばかりだ。
与党勢力は何れも、改革の頓挫や、連邦議会の解散・総選挙につながる恐れがある連立解消を望んでいない。

2027年に予定される5つの州議会選挙では、AfDの躍進が予想されるが、何れも伝統的に連立を組むCDUとSPDが強い地域で、AfDが第一党の座を手にする可能性は低い。
財政政策の歴史的な転換につながる債務ブレーキの改正手続きが終わり、2026年度の連邦予算も成立済みだ。
短期的には財政出動に支えられた景気回復シナリオが崩れるリスクも、この段階で連立政権が崩壊する可能性も低いが、現在の連立政権は第二次世界大戦後の歴代政権の中で最も議席の占有率が低く、議会基盤は極めて脆弱だ。
メルツ政権に対する評価も、二会派・三政党の支持者を中心に急落している。今後も重要法案審議で連立内の不況和音が高まる恐れがあり、中長期的には構造問題の解決に向けた改革遂行能力と政治安定が不安視される。
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※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド) 田中 理
