(ブルームバーグ):人工知能(AI)分野で新たなアジア株の勝者を探す動きが強まっている。技術シフトとバブル懸念が投資環境を塗り替えている。
OpenAIのChatGPT投入が契機となった大規模な株価上昇相場は4年目に入り、台湾積体電路製造(TSMC)やSKハイニックスなど恩恵を受けてきたアジアの主力株に息切れが見え始めている。市場の視線は、聯発科技(メディアテック)や中際旭創などより小規模で知名度が低めの銘柄に移りつつある。
AI基盤に不可欠な製品を提供する大手企業の株価は、過熱感が一服した後、持ち直す可能性が高い。ただ、大規模言語モデル(LLM)の学習から、AI技術の実用化やコスト削減に関心が移る中で、大手以外の企業にも脚光が当たり始める可能性がある。
ピクテ・アセット・マネジメントのマルチアセット投資責任者アンディ・ウォン氏(香港在勤)は「市場は新たなシナリオ、新たな枠組みを織り込み始めている。つまり、中心的なLLMがOpenAIだけとは限らないということだ。これが現在の動きを説明している」と指摘。「足元の状況を消化し、再調整し、新しいリスクプレミアムを適用する必要がある」と語った。

こうした一連の動きが始まったのは、アルファベットのAIモデル「Gemini(ジェミニ)」最新版が発表され、同社製AIチップを巡る取引が報じられた先月からだ。アマゾン・ドット・コムが最新のアクセラレーターを投入したことも、OpenAIと半導体大手エヌビディアに集中していた、AI関連株取引の潮流の変化を強めた。
OpenAIとの密接な関係から同社の代理銘柄とされてきたソフトバンクグループは、11月に株価が38%下落と、過去25年で月間として最悪の落ち込みとなった。エヌビディアの重要ファウンドリーであるTSMCやメモリー大手SKハイニックスも先月、それぞれ4%下落し、上昇の勢いが和らいだ。
ChatGPTは競合相手の急増で地位が揺らいでおり、エヌビディアのAI学習向けプロセッサーも、特定用途向け集積回路(ASIC)の台頭で注目度が低下している。こうした状況にあって、投資家は製品価格のマイナス要因を懸念し始めている。
LLMがコモディティ化すれば「コストの安い企業が勝者になる」と、ソウルのクアッド・インベストメント・マネジメントのハン・サンギュン最高投資責任者(CIO)は語る。向こう半年間は「エヌビディアとOpenAIが生み出したバブルがどうはじけるか」の重要局面になると予想する。
それでも投資家はこれらAI関連株を全て手放すのではなく、別の銘柄に資金を移している。アルファベットと手を組む台湾の半導体設計企業メディアテックの株価は、Gemini発表を受け、週間で2002年以来最も好調なパフォーマンスを記録した。アルファベット向けにプリント基板を供給する韓国のイス・ペタシスは先週18%上昇し、過去最高値を更新した。
最終製品のブランドや、サプライチェーンの最上位に立つ米ビッグテックがどこであれ、アジアの供給網は利益を享受できることが浮き彫りになった。
ブラックロックの新興国市場・アジア株責任者エゴン・バブレック氏は「サーバー、テスト環境、チップ製造に必要なあらゆるもの、メモリーカード、テスト機器、冷却システムに至るまで、データセンター向けとして世界で製造されるハードウエアの約9割は台湾、韓国、日本、タイ、そして中国本土から供給されている」と述べた。
原題:Big Shift in AI Stock Trade Drives Hunt for New Stars in Asia(抜粋)
--取材協力:Charlotte Yang、Youkyung Lee.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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