(ブルームバーグ):トレーダーの間では、日本銀行が12月に利上げを実施するとの見方が強まっているが、バンガード・グループによれば、インフレ抑制のため日本の金利がさらに上昇する必要があるというリスクが見落とされている。
日本の2年国債利回りはここ数日で1%を超え、2008年以来の水準に達した。植田和男総裁率いる日銀が、早ければ18、19日に開催予定の金融政策決定会合で追加利上げを決めるとの観測が広がっているためだ。
しかし、長年にわたり続けられた金融緩和政策の結果、日本のインフレ期待が04年までさかのぼるデータで最も強い水準近くで推移しているにもかかわらず、金利水準は主要10カ国(G10)の他の国々と比べて依然として極めて低いままだ。
運用資産11兆ドル(約1707兆円)のバンガードでグローバル金利責任者を務めるロジャー・ハラム氏は4日のインタビューで「市場はインフレ圧力を緩和するために日本の中立金利がどこまで上昇する必要があるかという点を過小評価している。従って、日本国債をアンダーウエートとすることが正しい判断だ」と説明。その上で「われわれは依然として、日銀が正常化路線を継続し12月に利上げを行うと考えている」と語った。
植田総裁は4日、参院財政金融委員会での答弁で、景気を刺激も冷やしもしない中立金利水準の推計にはかなり広い幅があるとし、常に狭める作業を続けていると説明。その上で「今後うまくそういうことができたら適宜公表していきたい」と語った。
日銀は以前、中立金利の水準について、1%から2.5%の間だとの見解を示していた。現在の政策金利は0.50%。
ハラム氏によると、バンガードはイールドカーブ(利回り曲線)の短期から中期ゾーンにおいて、ファンドのベンチマークに対し日本国債をアンダーウエートとしている。
ブルームバーグ・ニュースは4日、高市早苗政権は日銀が今月利上げを行うことを容認する姿勢だと、事情に詳しい複数の関係者から情報として報じた。これを受け、スワップトレーダーの間では利上げ観測がさらに強まっている。市場では現在、12月19日の日銀会合の終了時点での約22ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の引き締めを織り込んでいる。わずか1週間前は約14bpだった。
日銀利上げに関するバンガードの予想は、日本の利回り曲線で短期ゾーンが長期ゾーンをアンダーパフォームするという同社の見通しの根拠ともなっている。こうした見解はここ数カ月、三井住友信託銀行やティー・ロウ・プライス・インターナショナルなども支持してきた。
日銀の政策正常化は「フロントエンド(短期ゾーン)から外側に向かってフラット化を招く傾向がある」とハラム氏は指摘。「利回り曲線の相対的なスティープさ(傾斜の強さ)を踏まえると、ベリー(中期ゾーン)とロングエンド(超長期ゾーン)の間のカーブ・フラットナーは、実際にかなり魅力的だ」と語った。
5年と30年の日本国債のスプレッドは9月から10月にかけて約35bp縮小したが、その後は反転し、10月の低水準からは約15bp拡大している。
原題:Traders Underpricing Risk of Higher Japan Yields, Vanguard Says(抜粋)
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