③米国では様々な人種間で不満が高まっている
黒人、ヒスパニック系、アジア系、移民等のグループの米国社会での扱いについて、回答者が「満足」しているか「不満」かのGallup社の調査「米国での様々な集団の扱いに対する満足度の傾向(Trends in Satisfaction With How Groups Are Treated in the U.S.)」で「非常に満足」「やや満足」と回答した合計をみると、移民が低下傾向を辿っているほか、黒人、ヒスパニック系、アジア系でも調査期間(2001年-2025年)のピークを大幅に下回っている。
発表元によると、この満足度の低下は、社会の反移民感情の高まりや他の人種への不満の高まりが、人々の意識に反映されていると評価されている。
実際、米国では、大量の移民の増加によって、移民が既存の労働者から仕事を奪っている、あるいは賃金の抑制に繋がっている、住宅価格や賃貸料を押し上げている、治安を悪化させているなどの否定的な意見が増加している。
また、社会と文化の多様化が米国の強みと言われてきたが、アジア系やヒスパニック系の人口が大幅に増加したことで、米国の人種構成が大きく変化しており、米国のアイデンティティや社会への同化圧力、多文化共生について意見の対立が強まっている。
不法移民が低賃金労働の担い手として必要とされたため、滞在が黙認されてきた。また経済的な理由を背景に、当局も法律を厳格に適用してこなかったため、不法移民が増加し、その支援などによって財政負担の増加に繋がってきた。
さらに、国境沿いの州や、共和党の政策によって不法移民が増加したニューヨーク市などで受け入れ機能が逼迫し、財政的・行政的な大きな負担となった。
また、治安悪化への懸念も高まったことで、米国民は移民政策への不満を強め、トランプ政権の誕生と米国社会分断化の一因につながっている。
日本は社会融和に配慮した外国人増加を目指す必要
日本では、人口減少に対して、少子化に歯止めをかける政策をより強化し、合計特殊出生率を上昇させる政策を進めてきた。しかし、今のところそうはなっていない。
子育ての負担を軽減するための経済的な支援、仕事と育児の両立支援、結婚・妊娠・出産へのサポートなどを包括的に、さらに強化する必要に迫られている。
合計特殊出生率を上昇させる政策を強化しつつ、外国人労働者を受け入れる政策が実施されている。現在日本では、専門的・技術的分野の外国人の受け入れを積極的に推進しているほか、様々な在留資格で外国人材の受入れを進めている。
ただ外国人が増加はしているが、人口に占める割合は約3%と、1割程度の欧米諸国に比べて低い水準にとどまっており、拡大余地は大きい。
日本では、在留期間に関して、「技術・人文知識・国際業務」、「定住者」、「家族滞在」、「留学」、「日本人の配偶者等」は、在留期限が設定されるが、税金や社会保険料等の支払いなどの要件を満たし続ける限り何度でも更新できるため、日本に無期限で滞在し続けることが可能となっている。
もっとも、誰でも無期限に更新されるわけではない。在留資格が取り消される場合について、
①在留資格の申請・取得の際に、偽りや不正な手段を用いたことが判明した場合、
②与えられた在留資格の本来の目的となる活動を一定期間行っていない場合や、許可されていない他の活動を専ら行っている場合、
③中長期在留者(3ヵ月以上在留する外国人)
は、住居地に関する届出義務を課されるが、未提出や虚偽の届出をした場合がある。
さらに、2024年6月に成立した改正入管法(2027年6月までに施行)により、深刻化する外国人の税金や社会保険料の滞納問題に対応するため、支払能力があるにもかかわらず、悪意を持って滞納を続けた場合、永住者の資格が取り消される。
また、永住者以外の在留資格(技術・人文知識・国際業務、留学、日本人の配偶者等)は、取消しにはならないが、在留資格の更新や他の資格への変更が不許可になり、日本での滞在継続が不可能になる。
外国人人口の増加は、急激な人口減少による悪影響を緩和するだけでなく、多様性やイノベーション力を高め日本の国力を強くする効果も期待できる。
また、長期在留者や永住者は、社会保険(国民年金・国民健康保険)の納付義務が生じるため、社会保障制度の維持にも貢献する。
一方、社会の安定、治安、文化、社会保障など多方面に影響を及ぼす。米国のように、政治・経済的な理由から不法滞在者を容認することは、経済格差の拡大、治安の悪化、社会対立を招きかねない。
日本では、米国のような社会の分断化を起こさず、社会の安定を維持するためにも、状況に即した受け入れと厳格な運用ルールが求められる。同時に、外国人の日本社会への融合も進める必要がある。
多様な背景を持つ海外の人々が日本社会に溶け込み、共存できる環境をつくることは重要である。外国人が日本文化に合わせるだけではなく、日本人も異なる文化を受け入れ、社会全体で多様性に対応することが必要である。
※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 桂畑 誠治
※なお、記事内の「図表」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください。
