(ブルームバーグ):米疾病対策センター(CDC)はウェブサイトのページを更新し、ワクチンが自閉症を引き起こす可能性を示唆する内容に変更した。これまでの医学的コンセンサスを否定するもので、ケネディ厚生長官が主導するキャンペーンを後押しした形だ。
ワクチンに関して科学的に否定されている主張を広めてきた「メーク・アメリカ・ヘルシー・アゲイン(米国を再び健康に)」運動の支持者らと、公衆衛生専門家の論争が続いてきたが、今回の変更は新たな火種となる。ケネディ氏はこれまでもワクチンに関する自身の見解を巡りCDC職員や医師団体、科学者らと対立してきた。
CDCのサイトは19日遅く、乳幼児へのワクチン接種が自閉症につながる可能性を科学的研究は排除していないとの文言を加える形で更新された。また、「ワクチンは自閉症を引き起こさない」という表現の横にはアスタリスク(脚注)が付けられた。

テキサス州オースティンの小児科医アリ・ブラウン氏はこの変更に驚き、CDCのウェブサイトがハッキングされたのではないかと思ったと振り返る。同氏は電子メールで、「CDCのサイトをエビデンスに基づく情報源として信頼することはもはやできない」と指摘した。
CDCは、はしか・おたふくかぜ・風疹(MMR)ワクチンと自閉症に関連がないことを示した主要研究に疑義を呈し、今回の変更を正当化した。
ケネディ氏は長年、自閉症とワクチンの関連に注目してきた。厚生長官の指名承認公聴会でもこの問題が争点となり、ビル・カシディ上院議員に対し、ケネディ氏はワクチンと自閉症の関連を否定するCDCの記述を削除しないと約束していた。
現在も「ワクチンは自閉症を引き起こさない」という文言自体は残されているが、カシディ議員との合意に基づき削除されていないことを示すアスタリスクが付けられた。
厚生省のアンドリュー・ニクソン報道官は、「CDCのサイトについてはゴールドスタンダードである科学的根拠に基づく形で更新している」として、変更を擁護。サイトには新たな研究へのリンクも追加された。
ワクチンに否定的な見方
長年にわたる研究でも、ワクチンが自閉症を引き起こすという決定的な証拠は確認されていない。CDCは従来から、小児ワクチン接種スケジュールを重要な公衆衛生ツールと位置付け、感染症の拡大防止に不可欠で、リスクを上回る利益があるとしてきた。
それでも米国では近年、ワクチンに対する否定的な見方が広がっている。今週公表されたピュー・リサーチ・センターの調査によると、MMRワクチンの利益がリスクを上回ると答えた共和党支持者は78%にとどまり、2016年の91%から大きく低下した。
医師でもあるカシディ議員はX(旧ツイッター)への投稿で、CDCによる変更を批判。ワクチンで予防可能な死を防ぐため、子ども向け主要ワクチンが安全であることを親に伝える必要がある」と指摘した。
さらに、「自閉症の原因ではないと確実に分かっている要因に注意を向けることは、家族が真に知るべき答えを奪うことにもなる」と訴えた。
原題:CDC Breaks from Medical Consensus on Vaccine-Autism Link (2)(抜粋)
--取材協力:Robert Langreth.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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