過去を振り返ると、外国への介入が、それを主導した政治家本人の利益につながった例を見いだすのは難しい。

それどころか、過去25年にわたる米国の国際的な関与、とりわけ中東での関与は、外国での軍事行動に対する有権者の深い懐疑心を生み出してきた。その結果、現職か野党候補かを問わず、大統領を目指す政治家の立場を損なう要因となってきた。。ジョージ・W・ブッシュ大統領が進めた「テロとの戦い」への反発は、バラク・オバマ氏、ドナルド・トランプ氏をホワイトハウスへ押し上げる原動力となった。

ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束する急襲作戦を受け、トランプ大統領はいま、こうした構図を転換できるかどうかを試している。

作戦実行前の昨年12月中旬に行われたキニピアック大学の世論調査では、ベネズエラ国内での軍事行動に対する米国民の支持は25%にとどまり、63%が反対していた。共和党支持層では支持が52%、反対が33%だった。圧倒的な成功とされた今回の作戦を受け、これらの数字は変化する可能性が高い。

すでにワシントン・ポスト紙の世論調査では、トランプ氏が共和党支持層での支持をさらに広げたことが示唆されている。急襲を支持すると答えた割合は74%に上り、無党派層の34%、民主党支持者の13%を大きく上回った。ただ、数カ月後に情勢がどうなっているかは不透明だ。

戦争が時間とともに支持を広げるケースは少ない。米国の大統領が軍事介入をめぐって高い評価を持続的に得ることはまれで、「星条旗の下での結束」効果も一時的にとどまる。

状況は必ずしも同じではないが、歴史はいくつかの教訓を示している。イラク戦争開戦の1カ月前にあたる2003年2月、ピュー・リサーチ・センターの調査では、フセイン政権を打倒する軍事介入を約66%の米国民が支持していた。しかし2019年には、62%が戦う価値のない戦争だったと考えるようになった。

アフガニスタン戦争について、2002年初めには米国民の93%が「間違いではない」と受け止めていたが、この割合は2021年には47%まで低下したと、ギャラップは報告している。別の世論調査では、米国史上最長となったこの戦争について、現在では約3分の2が「代償に見合うものではなかった」との認識を示している。

民主党のパット・ライアン下院議員はCNNの番組で、「私が有権者や全米の人々から聞いていることで、確かなことが一つある。それは、終わりが見えず、計画もないこうした紛争を誰も望んでいないということだ」と語った。ライアン氏はイラク戦争の退役軍人でもある。

同氏は「われわれは、体制転換や石油を目的とした戦争をさらに始めたいのか。それとも米国民のための医療を望むのか。機能するインフラが欲しいのか。役立つ教育が欲しいのか。1月3日、多くの人が目を覚ましたときに突き付けられたのは、人々や議会への協議もないままに下された選択だった」と述べた。

ライアン氏の主張は他の民主党議員からだけでなく、共和党マージョリー・テイラー・グリーン下院議員のような一部のMAGA(米国を再び偉大に)派の代表格からも同様の声が上がった。グリーン氏の目には、一般的な国民が抱える日々の苦しみに目を向けず、別の事柄に気を取られている大統領の姿が映っている。トランプ氏は今回のベネズエラでの作戦を原油価格の引き下げにつながると訴えているが、多くの国民には、米石油企業への利益供与にすぎないと受け止められる可能性がある。

それでも、軍事的勝利の余韻に浸るトランプ氏は、さらなる「勝利」を求めている。次に狙われるのは、キューバ、コロンビア、メキシコ、さらにはグリーンランドかもしれない。

ミラー米大統領席補佐官は「米国はグリーンランドを米国の一部として保有すべきだ」とCNNのインタビューで主張。そのうえで「グリーンランドの将来をめぐって、米国と軍事的に戦おうとする国は存在しない」と述べた。

これは、米外交政策が「力こそ正義」の時代を迎えていることを示すものであり、植民地主義時代への回帰とも映る。トランプ氏はかつて孤立主義を掲げて選挙戦を戦った。しかし、資源に恵まれた小国については、米国が手中に収め得る存在とみなす側面も持つ。MAGA色を強めた議会共和党も、こうした動きを黙認している。

トランプ氏を支持する熱心なMAGA派の一部は、米軍の力を誇示した今回の作戦を高く評価している。ただ、急襲自体は出発点にすぎない。ベネズエラの今後、そしてトランプ氏の照準に入る他国について、どのような道筋を描くのかが大きな難題だ。これは、大きな約束を掲げながら実現できなかった歴代の米大統領が学んできた教訓でもある。

米国はこれまでも同様の局面を経験してきた。今回だけが例外になるとは考えにくい。

(ニア・マリカ・ヘンダーソン氏は、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Venezuela May Haunt Trump Eventually: Nia-Malika Henderson(抜粋)

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