(ブルームバーグ):5日の日本市場では株式が大幅に続落。日経平均株価は5万円の大台を割り込み、下げ幅は一時2400円を超えた。米国市場で株価の割高感が意識され、ハイテク株を中心に下げたことが投資家心理を悪化させた。リスク回避の動きから円は買いが先行。債券は10年国債入札の弱い結果を受けて上げ幅を縮めている。
米国では金融大手の経営者らが株価調整の可能性について警告したほか、著名投資家がエヌビディア株などに対する弱気ポジションを開示し、市場の警戒感が強まった。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は前日に4%下落した。
日本株も10月以降、日経平均は前日までに15%上昇し、過熱感が意識されやすかった。大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、日本株は世界株の中でも堅調だったため「買いのポジションを持っている投資家が多かった」とし、日本株全体に対して利益確定売りを急ぐ動きが出ていると述べた。
一方、好決算を発表した銘柄への買いにより、株価指数は午後に下げを縮小。リスク回避圧力が和らぐ中、円も上昇幅を削っている。
株式
株式は幅広い業種で売りが先行し、日経平均は一時4.7%安と4月11日以来の日中下落率を記録した。東証プライム市場に上場する銘柄の約8割が下落し、特にソフトバンクグループやアドバンテスト、日立製作所など人工知能(AI)関連の主力株で売りが膨らんでいる。
大和証の坪井氏は、市場が期待する日経平均の予想変動率を示す日経平均ボラティリティー・インデックスが一時40を上回ったことを踏まえ、相場の調整は「今日で終わらず、数日は難しい地合いになる可能性がある」と話した。
ヴァンエック・アソシエイツのクロスアセットストラテジスト、アンナ・ウー氏は「大幅な上昇後の調整局面で、バリュエーションが焦点になりつつある」と指摘した。
半面、決算が好調だった銘柄には買いが集まり、株価指数は午後に入って下げ幅を縮めている。前日公表の任天堂株が急伸したほか、昼休み時間中に発表した三井物産や大林組は上昇に転じた。
為替
円相場は対ドルで153円台半ばで推移。株安を受けたリスク回避の買いで一時152円台後半まで上昇。ただ、円の先安感も根強く、その後上げ幅の大半を解消している。
日本銀行が朝方発表した9月の金融政策決定会合の議事要旨への反応は限定的だった。
みずほ銀行金融市場部グローバル為替トレーディングチームの田中潤平次長は、日銀の利上げは「12月でも来年1月でも大きな違いはなく、事前に織り込まれるはずなので大きな影響はないだろう」と指摘する。当局の円安けん制についても「介入が差し迫っている感じはなく、ドル・円相場はじりじりと155円を試しに行く」と予想した。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長も、足元では株価の下落がドル・円の重しになっているが、健全な調整の範囲内とみており、株価が落ち着いてくれば円売り・高金利通貨買いの「円キャリートレードが復活し、155円をもう一度試しに行く」とみている。
債券
債券相場は上昇幅を縮小。リスクオフの流れで買いが先行した後、この日行われた10年国債入札が弱い結果となり、やや売りに押されている。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、10年債入札はやや弱い結果だったと指摘。「朝方に金利が低下し、直近レンジの真ん中くらいの利回り水準だったので、早期の利上げ観測が根強い中、投資家は買い急ぐ必要はないと判断したのだろう」と述べた。
入札結果によると、投資家需要の強弱を反映する応札倍率は2.97倍と、前回の3.34倍から低下。最低落札価格は100円22銭と、市場予想100円34銭を下回った。大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は13銭と、前回の19銭から縮小した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:横山桃花、アリス・フレンチ.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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