NECは29日、テレコムやブロードバンド事業者向けソフトウエア企業の米CSGシステムズ・インターナショナルを4447億円で買収し、完全子会社化すると発表した。

発表によると、2026年中に買収を実行する。手元資金や負債でまかなうとし、新株発行での資金調達は予定していない。業績に与える影響は現在精査中で、今後開示すべき事項が発生した場合には速やかに開示する。1株あたりの取得額は80.7ドルで、CSGの28日終値に対して約17%のプレミアム。

NECの森田隆之社長

NECはテレコムサービス事業の中で高付加価値なソフトウエア・サービス事業の拡大を進めている。今回の買収によって、事業基盤の強化や顧客に最適なソリューションを提供することが可能になるとしている。

森田隆之社長は同日の決算説明会で、買収するCSGについて「ずっと関心があった会社」だったと述べた。中期経営計画に沿って業績が堅調に推移する中で、戦略的に5000億円超の資金を使える実力がついてきたことに加え、現在の地政学の状況から「米国市場に事業のポートフォリオを持っておくのは非常に重要」だと説明した。

森田氏は、さらなる対米投資の可能性を問われると、経済安全保障に関わる領域やセキュリティークリアランスを前提とした日米の共同開発の領域に「オポチュニティー(機会)があると思っている」と述べた。

トランプ米大統領の関税政策で企業のコスト負担が増す中、米国内で生産体制を検討する動きが世界的に広がっている。日本企業にとっても、関税リスクの回避や現地市場への迅速な対応のため、米国に製造拠点を設けることや投資拡大がリスク分散につながるとして有力な選択肢の一つになっている。

米国コロラド州に本社を置くCSGは、米通信業者や金融・ヘルスケアなど幅広い業界に顧客基盤を持ち、安定的な収益を確保しているという。山品正勝共同最高執行責任者(Co-COO)は、今回の買収によってテレコム/ブロードバンド分野での世界シェアは約20%になるとしたうえで、30%のシェア獲得を目指すと述べた。

(記者会見の内容を加えました)

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