米国の商務省および国防総省は3日、レアアース(希土類)磁石の国内生産企業に対して資金提供や出資を視野に入れた支援を行うと発表した。中国が支配的な供給国となっているレアアース磁石は、米中貿易摩擦の焦点となっている。

商務省は、2022年の国内半導体業界支援法(CHIPS法)に基づき、ノースカロライナ州に本拠を構えるバルカン・エレメンツに対して5000万ドル(約77億円)を提供する非拘束的な暫定意向書に署名したと声明で明らかにした。資金は、戦闘機や風力タービンなどさまざまな重要製品に使用される永久磁石の製造設備購入に充てられる。

バルカン・エレメンツは発表資料で、国防総省の戦略資本局(Office of Strategic Capital)から6億2000万ドルの直接融資を受けるほか、民間資本として5億5000万ドルを調達し、米国内に年産1万トン規模の磁石工場を建設すると発表した。

同社の提携先であるレアアース企業、リエレメント・テクノロジーズも、同局から8000万ドルの直接融資を受け、民間資本による同額の拠出と合わせてリサイクル・精製能力を拡充する。

バルカン・エレメンツのジョン・マスリン最高経営責任者(CEO)はインタビューで「夢が現実になった」と述べ、「当社の現在の生産量は押し上げられ、米国にとって意味ある規模に到達する」と語った。

米政府はこれまでも永久磁石供給網に対する直接投資を強化していた。今回の発表で、中国の影響を受けないレアアースや磁石の供給網構築に注力する姿勢も鮮明になった。リスクの高い賭けではあるものの、米国と同盟国が中国依存から脱却する契機となる可能性がある。ただ、今回の資金提供は拘束力のない取り決めに基づくもので、今後の展開は不透明だ。

国防総省はブルームバーグへの声明でこの取り決めの詳細を確認し、条件付き融資の財源が7月に成立した「一つの大きくて美しい法案」によるものだと説明した。同法は、重要鉱物の生産や関連産業向けに総額1000億ドルの融資枠を設けている。

声明は「これらの合意は、米国内での先端レアアース元素の分離、金属化、磁石製造能力の確立を支援するものだ」としている。

ラトニック商務長官はバルカン・エレメンツの発表資料で「バルカン・エレメンツへの投資は、米製造業向けのレアアース磁石生産を加速させるだろう」とした上で、「重要鉱物とレアアースの生産の国内回帰に全力を注いでいる」と述べた。

今回の提携に伴い、国防総省はバルカン・エレメンツおよびリエレメントの新株引受権(ワラント)を受け取る予定。ただ、詳細は明らかにされていない。

原題:US Looks to Invest in Rare-Earth Firms in Race With China (2)(抜粋)

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