(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事は3日、労働市場が一段と冷え込むリスクは、インフレ再加速のリスクを上回るとの見方を示した。ただ、12月の追加利下げを支持する姿勢までは示さなかった。

クック氏はブルッキングス研究所での講演で「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、二つの責務の双方でリスクが高まっている局面にある」と指摘。「12月を含むすべての会合がライブとなる」と述べた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は先週の会合で、2会合連続の0.25ポイント利下げを決定。ただパウエルFRB議長はインフレと雇用の見通しを巡り当局内の見方が分かれているとして、12月に再度利下げを行う保証はないと強調した。
クック氏は、トランプ大統領による関税措置の影響が経済全体に波及することから、今後1年間はインフレの高止まりが続くとの見通しを示した。しかし「理論的には、関税による物価上昇は一時的なものにとどまるはずだ」とし、関税の影響が薄れるのに伴い、インフレ率はFRBの目標とする2%水準に向けて低下していくとの見方を示した。
労働市場については、最近の雇用の伸び鈍化は「主に移民政策の影響による人口増加の減速で説明できる」と述べた。
その上でクック氏は「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」とし、先週の利下げ判断は適切だったとの認識を示した。
講演後の質疑応答では、「労働市場の悪化は非常に急速に進む可能性がある。非常に注意深く見守っている」と語った。
同日早くに他のFRB高官2人も、12月会合での3回連続利下げの是非について明言を避けた。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁はフロリダ州ウエストパームビーチでのイベントで、12月会合での判断に向け「予断を持たずにいるべきだ」と述べ、物価と雇用の双方のリスクを慎重に見極める考えを示した。
シカゴ連銀のグールズビー総裁はヤフー・ファイナンスとのインタビューで、労働市場よりもインフレを懸念していると述べたが、12月のFOMCの対応についてはまだ判断していないとした。
最高裁での係争
3日の講演は、トランプ大統領が8月にクック氏を住宅ローン詐欺疑惑でFRB理事職から解任しようとしたことを受け、同氏が解任差し止めを求めて提訴して以来、初の公のスピーチとなった。訴訟は連邦最高裁で審理中で、来年1月に口頭弁論が行われる予定。最高裁はトランプ氏が求めた審理中の即時解任を認めなかった。
この裁判は、ホワイトハウスからの独立性をめぐるFRBの立場を試す重要な事例とみられている。トランプ氏は今年、利下げを強く要求するなど、FRBへの影響力拡大を試みてきた。
クック氏は講演の締めくくりで「この件やFRBへの影響についてはすでに十分議論されており、訴訟が進行中のため現時点でこれ以上コメントするのは適切でない」と述べた。その上で、今後も職務を遂行していくと強調した。
原題:Fed’s Cook Says Labor Market Concerns Outweigh Inflation Risk(抜粋)
(理事の発言を追加して更新します)
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