来日中のベッセント財務長官は29日、日本銀行にインフレ抑制に取り組むための裁量の余地を与えるよう、日本政府に呼び掛けた。日銀に十分な裁量を与え、インフレ期待を安定させて為替の変動を抑えることが重要だとの考えを示した。

トランプ米大統領に随行しているベッセント氏は「政府が日銀に政策運営の裁量を認める意思が、インフレ期待を安定させ、為替相場の過度な変動を防ぐ上で鍵となる」と、X(旧ツイッター)に投稿した。

高市早苗首相はこれまで低金利を支持してきたが、最近は日銀の政策について直接的な発言を控えている。就任以降、物価上昇の影響に懸念を示し、生活費の上昇に直面する家計を支援する対策を講じる意向を表明している。

ベッセント氏の投稿を受けて、円が対ドルで上昇し、一時1ドル=151円54銭前後となった。

木原稔官房長官は定例会見で、他国の閣僚からの発信の逐一にコメントは控えるとした上で、「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべきもの」との考えを改めて示した。日銀には、政府と密接に連携を図りながら、「2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切な金融政策運営を行うことを期待する」と述べた。

ベッセント氏は投稿で、片山さつき財務相との「協力を楽しみにしている」とコメントするとともに、「アベノミクスが単なるリフレ政策から、日本国民の成長とインフレ懸念のバランスを取る政策へと進化してきたことを彼女が深く理解している点を心強く思う」と表明した。ベッセント氏と片山氏は27日に会談していた。

米財務省が日本時間28日午後公表した声明によると、ベッセント氏は会談で「健全な金融政策の策定とコミュニケーションが、インフレ期待の安定と過度な為替変動の防止を図る上で重要な役割を果たす」と強調。アベノミクス導入から12年が経過し、現在は経済環境が大きく異なることも指摘したという。

日銀は29、30両日に開く金融政策決定会合で政策維持を決めると広く予想されている。一方でエコノミストの間では、日銀が来年1月までに利上げに踏み切るとの見方が有力だ。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の木村太郎シニアエコノミストは「ベッセント財務長官が日本政府に対し、日銀に政策運営の裁量を与えるべきだとの考えを示唆したものの、日銀が今週、政策維持の方針を変える可能性は低い。米国からの穏やかな圧力よりも、世界的な市場混乱を再び引き起こすリスクへの懸念の方がはるかに大きいためだ」との分析を示した。

ベッセント氏は8月、インフレ抑制の取り組みで「日銀は後手に回っている」と述べていた。その後は日本の金融政策に対するトーンを和らげ、今月には、適切な金融政策の運営を継続すれば、円相場は適正な水準に落ち着くとの見解を示した。

キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジョナス・ゴルターマン氏は28日の顧客向けリポートで、「ベッセント氏の見解は最終的に現実のものとなり、米国と日本の金融政策の格差が徐々に縮小するにつれて円は反発するとわれわれは考えている」と指摘した。

原題:Bessent Calls on Japan to Give BOJ Space to Fight Inflation (2)、Bessent Says BOJ Policy Space Is Key, Fueling Rate-Hike Bets、Bessent: Japan’s Willingness to Allow BOJ Policy Space Is Key(抜粋)

(5段落目に木原官房長官の発言を追加して更新します)

--取材協力:小宮弘子、Brett Miller、関根裕之.

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