日本国債市場のトレーダーは、訪日中のトランプ米大統領が日本に対して防衛費の一段の増額を迫る可能性があるとして、警戒を強めている。

今月初めに高市早苗氏が自民党総裁選で予想外の勝利を収め、国債利回りは大きく上昇した。その後、市場は落ち着きを取り戻しつつあったが、長いゾーンの利回りに再び上昇圧力がかかる可能性がある。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、「保守派の政治家として防衛問題への関心が強い高市氏は、米国の要求に対して前向きな対応を取る相手と見なされる可能性がある」と指摘。「その場合、日本の財政見通しや国債利回りの安定性、特に超長期債にとってリスクとなり得る」と述べた。

高市氏は首相就任後の所信表明演説で、防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に引き上げる時期を2025年度中と2年前倒しする方針を示した。これは同盟国に軍事費負担の拡大を求めるトランプ氏の長年の要求と合致する。

防衛費増額は国債発行増につながる可能性があり、市場関係者は懸念を強めている。高市首相は増税せずに政府収入を増やすことを目指している。また、物価高への対応などを柱とする総合経済対策の策定を指示したが、片山さつき財務相はその財源確保のために国債の増発が必要になる可能性を示唆した。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、防衛費の増額により国債増発の公算が大きくなるなら「金利は上昇する」と話した。

市場はまた、日本がトランプ大統領との貿易協定で合意した5500億ドル(約84兆円)の対米投資について、その資金調達手段を警戒している。交渉を担当してきた赤沢亮正氏は、対米投資は為替相場に影響を与えない形で実行が可能としているが、懸念はくすぶる。

SMBC日興の田氏は「日本から米国への投資になるとドル・円が上昇し、日本銀行は利上げをしやすくなる」と指摘。「利上げ期待が高まったり、中期ゾーンの金利が上昇したりすると、フラットニング(利回り曲線が平たん化)する圧力が加わってくる」とみている。

ベッセント米財務長官は今月、日銀が適切な金融政策の運営を継続すれば円相場は適正な水準で落ち着くとの見解を示し、「日銀がインフレ対策で後手に回っている」とした8月の発言からトーンを緩めた。トランプ大統領も度々、日本が貿易上の競争力を得るために円安に誘導していると非難している。

今週の日銀金融政策決定会合では今後の政策運営についてどのような示唆があるかが注目となる。金融政策は据え置きの見込みだが、オーバーナイト・インデックス・スワップ市場は年末までに利上げが実施される確率を約50%織り込んでいる。

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