若い女性は登録しているのかモラハラ

結婚相談所や自治体の結婚支援センターに中高年男性から「子どもが産める20代女性は登録しているのか」「なぜ若い女性とマッチングさせないのか」といった問い合わせやクレームが定期的にあると聞く。

これらの発言が実現可能性の非常に高いものであればまだ構わないのかもしれないが、統計的実態からは乖離しすぎたモラハラ発言となっている。

なぜなら、100年以上前の1899年(明治32年)からの国の統計を確認してみても、夫婦の平均年齢差が5歳以上となったことは1度もない。また、初婚同士の結婚で平均年齢差が3歳以上あったのは、1949年(第二次世界大戦直後の時代)までである。

つまり38歳の男性が5歳年下の33歳の女性(32歳の男性の場合は27歳の女性)と当然のように結婚できるわけがなく、また、38歳の男性が35歳の3歳年下女性と結婚することも発生割合から考えれば難しい(32歳の男性であれば29歳の女性との結婚)。

再婚者を含む全婚姻平均でも、平均年齢差が3歳以上あったのは1971年までとなっている。平均3歳差は、現在団塊ジュニアである50代前半男女よりも上の男女の「親世代までの話」(今の若者の祖父母世代)である。

初婚同士の結婚(2024年)において、男女どちらかが上の1歳差までの結婚が全体の48.2%と半数を占め、3歳差までの結婚で7割超となる。

同じ時期に中学生時代を過ごしている、または高校生時代を過ごしているような男女が成婚しやすい、というとイメージしやすいのではないだろうか。

アンコンシャスバイアスに注意

結婚年齢に関する相談を結婚支援の現場の方々からうかがっていると、そこにはアンコンシャスバイアスの中でも「確証バイアス」が非常に強い世界であることが見えてくる。

わかりやすくいうと「人は見たいように物事を見る」生き物なのである。そして年齢が上昇するにつれて、自らの周囲に既婚者が増え、特に30代に入ると選べる相手が急減し、若かりし頃のように合コンや飲み会の誘いも減ってくる。

こうなると、確証バイアスに加えて正常性バイアスが発動し始める。こちらもわかりやすくいうと、「不安を払しょくするために都合のいい情報だけを信じ込む」行動である。

これらのバイアス行動は結婚を希望する本人もそうであるが、その親世代も同様で、自治体センターに「せっかく登録したのに、なぜうちの息子に20代の女性を紹介できないのか」とどなりこむ母親もいるという。

その息子というのが40代で、センター職員が対応に苦慮した、というのもつい最近の話である。

結婚に関して正確なエビデンスを求め、情報のソースをしっかりたどる習慣が日本人にもっと身につけば、もしかすると日本の未婚化はもう少し軽減されるのかもしれない。

※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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